研究開発

世の中の変化を先取りした新製品・新技術の開発

当社グループの研究開発の基本方針は、「未来を見据えた素材・材料開発」、「コーポレート/ディビジョン・ラボが一体となり、事業競争力強化に向けた新製品・新技術の創出」および「産・官・学連携(含むCVC) によるR&D成果の早期実現」です。この基本方針のもと、「循環をデザインするサスティナブルなマテリアル」を社会に提供していくことを目指しています。
研究開発戦略では、素材の動脈と静脈の両方の機能強化、GHG削減に資する新製品やプロセス革新を図り、「新製品・新技術・新事業創出を通して、持続的な企業価値向上を実現」することを掲げています。資源循環の社会的要請が高まる中で当社が進むべき方向性を意識して、新たな資源循環プロセス技術を獲得するためのテーマを創出します。並行して、メガトレンドや市場変化を的確に捉え、成長分野(モビリティ、半導体関連)や当社材料技術を活かしながら新領域(ライフヘルスケア等)に注力します。また、新規テーマにはGHGゼロの思想を入れて研究開発を行っていきます。さらに、長期的な視点で、夢のある将来技術にも果敢にチャレンジしていきます。当社グループは、技術、人材、情熱を結集し、顧客視点とスピードをキーワードにイノベーションを起こしていきます。コア技術をベースとした技術開発力とものづくり力を融合することで価値を具現化し、新製品、新サービス、新事業の創出および知的財産の整備に取り組みます。

新規事業戦略

新規事業を継続的に創出・育成するため、リーンスタートアップを意図した新規事業開発のためのステージゲート制度(BDR:Business Design Review)を整備することで、アイデア創出から事業拡大までの手順を定めるとともに、適切なテーマの多産多死を促しています。新規事業の育成場所は社内に止まらず、歯科健診のDXを推進するヘルスケア領域の子会社「デンタルドア株式会社」設立のようにカーブアウト等も積極的に検討しています。 
また新規事業創出のブランド「SU(スウ)」の下、社員の自発的なアイデアを事業化する社内ベンチャー制度「SU project」や、スタートアップ等の外部パートナーとの協創活動により事業化を加速するアクセラレーションプログラム「Wild Wind」を展開することで既存事業の枠を超えた新たな価値を社会に提供し、これらの活動を通してイントレプレナー人材の育成にも繋げています。 

2024年度以降の強化ポイント

2024年度は、中期経営戦略2030のPhase1として、ものづくり力の別格化を実現し、生産プロセスの高度化、スマートファクトリー化を推進し、新事業の創出促進に取り組み、また、メガトレンドを捉えた資源循環、脱炭素化、半導体関連、モビリティ分野を中心とする研究開発の推進を継続しています。

ものづくり・R&D戦略部のミッション

三菱マテリアルグループの事業競争力強化・新規事業創出のため

 

  • 世界基準の、顧客から信頼される強固な研究開発基盤を構築し、研究開発から量産化(事業化)まで完結できる組織となる。
  • 当社グループのプロセス技術改善、スマートファクトリー化等の技術開発・改善を推進しものづくり力を強化する。
  • 多様なアイデアを生み出す、世界中から収集する、能力を有する人材・組織を作り、当社Gの成長に貢献するアイデア・製品・事業を生み出す。
     

無形資産価値を最大化する戦略的知的財産形成・活用を当社グループ全体で促進する。

ものづくりR&Dの推進体制

アイデア創出、研究開発から量産化・事業化までを一気通貫で実現をするため、ものづくり(生産技術)、開発、マーケティング、新規事業に関する部門を統合した、ものづくり・R&D戦略部を新設しています。同部内のイノベーションセンターでは、研究開発・ものづくりの課題や新規事業のテーマごとに、人材を効率的に活用する体制を整え、新製品・新事業の創出や課題解決に向けた開発や技術獲得を進めています。また、インキュベーションセンターでは、イノベーションセンターから生み出される事業やカンパニー単独では拡大が難しいと判断される事業等を育成・強化しています。さらに、社内外と連携し、事業基盤強化および新規事業創出の推進および会社横断的な専門人材の育成・確保と継続的なレベル向上を目指すため、2024年度より新規事業室、知的財産室、開発企画室、ものづくり・生産技術企画室を同部内に設置しました。
これらの取り組みにより、現在の課題である各戦略間の連携や柔軟な経営資源の配置、総合的なプロジェクトマネージャーや量産化・事業化の専門人材育成を強化していきます。

ものづくり・R&D戦略部の目標と戦略

ものづくり・R&D戦略部の目標

新事業創出、ものづくりの別格化、重要技術の維持発展を通して持続的な企業価値向上を実現し、中経2030で定めた当社の事業機会である、資源循環の拡大、高機能素材・製品供給の強化に貢献します。

ものづくり戦略

  • 中経2030に基づく工場ビジョンの策定、及び工場実力評価と課題設定・解決を追求
  • ボトムアップ活動、ものづくり基盤強化、技術開発・改善による「ものづくり力の別格化」

研究開発戦略

  • 新製品・新技術・新事業創出を通して、持続的な企業価値向上を実現

MMCイノベーションファンド

当社は2019年3月に、JMTCキャピタル合同会社と共同で、材料技術を有するベンチャー企業を投資対象とするコーポレート・ベンチャーファンド「MMCイノベーション投資事業有限責任組合」を設立しました。資源循環や脱炭素関連のプロセスおよび材料技術、半導体関連、次世代エネルギー関連、金属加工関連およびライフヘルスケアに関連する材料技術、DX、AIを活用したものづくり技術を重点対象として、当社とシナジーのある技術系スタートアップ企業を支援するとともに協業を加速します。

時期

投資先

投資先の技術・製品

当社の狙い

2019年10月

エレファンテック(株)

金属ナノインクのインクジェット印刷と無電解銅めっきを用いた、アディティブ・マニュファクチュアリングによる電子回路基板の製造技術を保有している。

同社を評価パートナーとして「銅ナノインク」の開発を開始、回路基板用に銅の新製品を開拓し材料供給の機会を狙う。

2020年5月

(株)エネコートテクノロジーズ

従来のシリコン系の太陽電池と比べて、高い発電効率と軽量性、柔軟性を特徴とするペロブスカイト太陽電池の開発を行っている。

ペロブスカイト太陽電池の性能向上や鉛フリー化に必要な周辺材料等の開発に関して同社と協業し、ペロブスカイト太陽電池の普及時の材料供給の機会を狙う。

2020年6月

CONNEXX SYSTEMS(株)

リチウムイオン電池(LIB)と鉛蓄電池を組み合わせた新規の蓄電池や高出力LIB、次世代電池の開発・生産技術を有している。

使用済み車載LIBをリユース・リサイクルする技術開発を進めており、回収された使用済み車載LIBの定置用蓄電池等へのリユースを同社と検討することで、リユース事業を推進する。

2020年9月

Nature Architects(株)

部品等の軽量化のために必要な部分のみに強度を持たせたり、硬い部材に振動を吸収する機能を付与したりするなどの独自の構造体設計技術に強みがある。

同社と協業し、当社が持つ非鉄金属をはじめとする材料特性に関する知見と、同社の設計技術を掛け合わせ、当社の材料を活かした積層造形で、新たな付加価値を持った独自の製品の開発に取り組んでいく。

2021年7月

(株)イムノセンス

特許技術「GLEIA(Gold Linked Electrochemical Immuno Assay)」によって、高感度と小型化を両立した、独自のPOCT(Point of Care Testing:医療現場でのリアルタイム検査)向け免疫センサーを開発・提供する。

同社との協業を通じ、当社が持つ非鉄金属をはじめとする素材に関する知見と、同社の持つライフヘルスケア関連の技術や知見とのシナジーを見出し、ライフヘルスケア領域に応用することを目指す。

2024年9月

Visban(株)

大容量データの高速伝送や複数のデバイスの同時接続により混雑の少ない通信環境の提供を可能とするミリ波ネットワークデバイスの開発を行っている。

同社と協業し、当社の強みとする微細回路形成に必要な素材、異種材料接合技術、およびその評価技術を適用することで、5G/6G通信の普及拡大に大きく貢献することを目指す。

2024年11月

(株)illuminus

独自技術である「レーザー誘起還元法」を用いて、金属ナノ粒子や合金ナノ粒子を開発・製造する。

同社と協業し、ナノ粒子合成プロセスに必要な素材の提供をはじめ環境負荷の少ない新規金属・合金ナノ粒子の製造プロセスの確立を目指す。

2024年度の主な取り組み

ペロブスカイト太陽電池の発電効率を向上させる電子輸送層の成膜用インクを開発 
~従来型のインクより約1.5倍の高発電効率を実現 ~

当社と株式会社エネコートテクノロジーズ(本社:京都府、以下、「エネコートテクノロジーズ」)は、ペロブスカイト太陽電池を構成する電子輸送層の研究開発に共同で取り組み、従来比約1.5倍の発電効率を実現する塗布タイプ成膜用インクを開発しました。 

近年、ペロブスカイト太陽電池は高効率で低コスト、さらに軽量・柔軟性を持ち、設置が難しかった場所にも対応できることから、再生可能エネルギー分野で注目されています。従来課題とされていた耐久性や安定性も技術の進展により向上しており、次世代の太陽電池として商業化に向けた取り組みが積極的に行われています。 

ペロブスカイト太陽電池には、積層する材料の違いから「順型構造」と「逆型構造」の2つの構造があります。製造の簡便さや耐久性の理由から「逆型構造」が注目されていますが、この構造ではペロブスカイト発電層の上に「電子輸送層(*1)」と呼ばれる膜を、ダメージを与えずに形成する必要があります。これまでは炭素系材料であるフラーレン(C60)を真空プロセスで成膜していましたが、商業化に向けて低コストの材料および新たな成膜方法に関する研究開発が進められています。また、電子輸送層用インクには,ペロブスカイト層への浸食防止やインクの分散性(塗布性)を確保し、成膜後の均一性や密着性が求められています。 

  1. ペロブスカイト発電層で生成した正孔と電子のうち、電子のみを集電板に運搬する材料 
ペロブスカイト太陽電池の模式図
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ペロブスカイト太陽電池の模式図
新開発の酸化スズナノインク
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新開発の酸化スズナノインク

この度、MMCイノベーションセンターは、NEDO(*2)のグリーンイノベーション基金事業を受託したエネコートテクノロジーズより委託を受け、製造コストに優れる塗布型のプロセスを採用した電子輸送層形成材料の開発に取り組み新たな成膜用のインクを開発しました。 

  1. 新エネルギー・産業技術総合開発機構 

塗布型のプロセスは非真空状態で製造コストに優れるものの、成膜用インクの溶媒がペロブスカイト発電層にダメージを与えること、ダメージを与えない有機溶媒中ではナノサイズ(10-9mオーダー)の酸化スズ(SnO2)が凝集してペロブスカイト発電層との密着性が得られないことが課題でした。今回開発した塗布型の電子輸送層の成膜用インクは、酸化スズナノ粒子の表面を適切な材料で被覆することで有機溶媒中に凝集させることなく分散させることに成功し、ペロブスカイト発電層に対して十分に密着した緻密な塗膜を形成することが可能になりました。これにより、ペロブスカイト発電層から生成される電子を金属電極に効率的に輸送することができます。この新技術の採用により従来比約1.5倍の16.0%という高い発電効率を実現しました。 

性能特性図(JVカーブ)
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性能特性図(JVカーブ)

なお、本成果は2025年1月20日に京都大学宇治キャンパスにて開催された国際学会Asia-Pacific International Conference on Perovskite, Organic Photovoltaics and Optoelectronics (IPEROP25)にて発表しています。 
MMCとエネコートテクノロジーズは引き続き、成膜インクの塗布プロセスの開発も進め、大面積のペロブスカイト太陽電池への早期の実用化を目指してまいります。 


 この成果は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業(JPNP21016)の結果得られたものです。 

短期間での新規事業創出を目指す、アクセラレーションプログラムの"Demo Day"開催 
~2テーマの事業化準備に着手~

三菱マテリアル株式会社は、当社単独では事業化が困難とされるテーマについて、スタートアップ企業などの外部パートナーとの協創により事業化を加速する施策として、アクセラレーションプログラム「MMC Acceleration Program "Wild Wind"」を2023年11月よりスタートしました。このたび、事業化準備ステージへの昇格審査会である"Demo Day"を開催し、以下の2テーマに関してパートナー企業とともに事業化準備に着手することを決定しました。 
 
このプログラムでは、事業化に必要なアセットを保有する外部パートナーを募集し、当社との協業に合意いただいた外部パートナーと共に事業仮説の検証活動を進めてきました。パートナー企業との協業により、当社単独では通常成しえなかった速やかな仮説検証や実証試験が行われました。 
今後もお互いのアセットを活用することにより、事業化に向けた取り組みを加速させてまいります。銅合金の特性予測モデルを構築 
 

  1. テーマ名:寒冷地向け防災技術のための融雪センサーおよびIoT 機器 
    協業企業:株式会社さるぼぼアラーム 
    (代表取締役:星谷貴則、URL:https://sarubobo.net/ 
    事業概要:IoT機器の開発・製造・販売・設置・運用)  
     
  2. テーマ名:焼結型金属3Dプリンタ 受託造形サービス 
    協業企業株式会社3D Printing Corporation 
    (代表:デヴォア・アレキサンダー、デヴォア・愛子、URL:https://www.3dpc.co.jp/ 
    事業概要:設計・エンジニアリングサービス、受託製造、機器販売、材料開発) 
審査員と発表テーマの関係者
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審査員と発表テーマの関係者

本プログラムは2024年度も公開すべく準備を進めています。本年度は当社からの起案テーマのみならず、外部パートナーからの事業アイデアも積極的に受け入れる形でプログラム制度を拡張して開始しました。する予定です。当社はこのプログラムを通じてオープンイノベーションを活性化し、社会課題解決に寄与する新規事業創出を推進します。 


 当社グループは「人と社会と地球のために、循環をデザインし、持続可能な社会を実現する」ことを私たちの目指す姿と定めています。私たちの目指す姿の実現に向け、資源循環の拡大、高機能素材・製品供給の強化に取り組んでまいります。 

ものづくり・R&Dのトピックス

三菱マテリアルと東京工業大学「三菱マテリアル サステナビリティ革新協働研究拠点」を設置

三菱マテリアル株式会社と国立大学法人東京工業大学は、持続可能社会に貢献する革新的な材料およびプロセスに関する研究を行う「三菱マテリアル サステナビリティ革新協働研究拠点」を東京工業大学オープンイノベーション機構の支援のもと設置しました。
本協働研究拠点では、東京工業大学が保有する材料に関する幅広く高度な知見と、三菱マテリアルが蓄積している銅を中心とした非鉄金属に関する材料技術やリサイクルなどのプロセスに関するノウハウを組み合わせて、複合材料や次世代電池、CO_{2}利活用などに関する共同研究を行います。両者の強みを発揮し、単独の研究では困難であった課題に取り組むことで、持続可能社会に貢献するグリーン・トランスフォーメーション(GX)をキーワードとする革新的な材料およびプロセスなどの創出を目指します。
三菱マテリアルと東京工業大学は本協働研究拠点を活用して、最先端技術を積極的に取り入れながら技術開発を推進し、豊かな社会の構築に貢献してまいります。

学会・論文の受賞
日本銅学会「第56回論文賞」
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学会・論文の受賞
日本銅学会「第56回論文賞」

論文名:固溶強化型銅合金の低温焼鈍条件による転位パラメータの変化と応力緩和特性への作用
茨城大学・東北大学と共著
本研究は、Cu-Mg固溶型銅合金における応力緩和現象(熱負荷による耐熱性のへたり)に着目し、最先端のX線回折ラインプロファイル解析と、EBSD解析を組み合わせ、緩和現象の起きる材料組織的な変化を追求し、その改質メカニズムを明らかにしたものです。
Cu-Mg固溶型銅合金は三菱マテリアルが強みとしている銅材料であり、この研究成果により、今までよりも高い強度・応力緩和特性バランスを有する固溶型銅合金への設計指針が得られています。

日本ファインセラミックス協会「技術振興賞」

論文名:銅基板への無加圧接合を実現した焼結型銀ペーストの開発
本研究は、ファインセラミックス技術を活用した接合技術(パワーモジュール用基板と半導体素子の接合)であり、電気自動車の航続距離増大などの省エネへの貢献が大いに期待されています。

具体的には接合メカニズムの理解及びペースト成分の最適化により、Cu基板への直接接合を無加圧で可能とするもので、パワーモジュールの高性能化を低コストで実現するポテンシャルを有しています。
これらの内容をふまえ、当技術がファインセラミックス業界の発展に寄与する新技術として評価され受賞に至りました。

ものづくり力別格化

当社では、各事業部門が「ものづくり力別格化」のビジョンを継続的に描くことで、グループ支援機能を最大限に活用して当社グループのビジョンの実現を目指します。グループ内外の人的・技術的資源を活用し迅速に問題解決することにより、競合他社とは一線を画した「ものづくり力」の創出を実現するものです。

2025年度以降の強化のポイント

「ものづくり力別格化」の実現に向けた取り組みにより、中長期の事業成長につながる事業戦略に基づいた工場ビジョンを実現し、生産プロセス高度化のため、デジタル技術の活用による問題把握力の向上や仕事のやり方変革による本質改善力の向上を実現します。
また、外部の知見を積極的に活用し、さらなるものづくり力の向上を図ります。

工場ビジョンは、ビジョンづくりと施策フォローアップの効率化を図るための実効性のある仕組みを検討していきます。ものづくり経営フレームワークでは、工場マネジメントや業務プロセスの質を高い目線で評価・把握するよう「工場革新力」「管理力」「改善力」「運営力」「量産化力」「組織・人材育成力」の6つの評価に集約し2024年度より運用しております。2025年度は、工場別格化に向けた気づきを得られるツールへと軌道修正したものに、より目線の高い設問を追加していきます「革新力」を含む総合評価を継続的に使用できるよう、評価項目および内容のさらなる改善を行います。技術強化では引き続き「生産プロセス高度化」は複数テーマに取り組み、スマートファクトリー化構想立案と実現に向け、工場への適切な技術によるソリューションを提供し、品質向上や省人化、製造リードタイムの短縮等を実現する要素技術を確立していきます。また、デジタル技術を活用したデータ収集・利活用の基盤を整備し、改善活動のスピードアップ、業務高効率化を促進していきます。
基盤強化ではマネジメント力強化として、「生産性向上」「良品化条件」「第一線監督者」それぞれのマネジメント方法についてカンパニー/拠点に伴走していきます。 

当社では、体質強化として若手従業員を対象とした実践型ものづくり人材教育プログラムを展開しています。このプログラムは、ものづくり、開発、営業、管理の各分野に適用し、より実効性の高い取り組みを推進し、工場の収益向上に貢献していきます。特に今後益々必要とされるDX関連への知識が必要とされる活動を強化し、座学と実践を一つにしたDXの入門的位置付けとなるDXチャレンジや、技術系・製造系を対象とした実際のデジタル活用を行うものづくりデジタル活用教育を行っております。また、各工場の管理職には、DMAIC(定量的プロセス改善)指導者を育成する取り組みも進めています。さらに、2024年度に引き続き、2025年度にも、ものづくりの課題を掘起し、テーマアップ活動を強化していきます。これまでに蓄積したノウハウや技術を活かし、効率的な体制で課題解決に取り組みます。

知的財産

当社グループでは、事業戦略・開発戦略に沿った知財・無形資産ポートフォリオの形成、知的財産に関するリスクマネジメントおよび係争対応並びにグループの知財ガバナンス水準の向上を図る活動をしています。

企業価値における知的財産を含む無形資産の重要性が高まる中、コーポレートガバナンス・コードに対応して知的財産に関するガバナンス体制を強化しています。具体的には、執行役及び取締役への定期的な報告・審議によるガバナンス体制を強化するとともに、「戦略対話」等の知的財産活動の取り組みを積極的に外部に開示しています。グループ全体での知的財産・無形資産価値の最大化を図る観点から、グループとしての知的財産活動の方向性を示した「グループ知的財産基本方針」を2022年5月に制定しました。また、2023年2月に、グループ知的財産基本方針に基づき、グループ会社の知的財産に関する活動をより明確に規定する「グループ知的財産規定」を制定しました。

グループ知的財産基本方針

私たちは、知的財産活動を通じて、「人と社会と地球のために、循環をデザインし、持続可能な社会を実現する」ことに貢献します。
 

  1. 事業戦略および開発戦略に沿って知的財産権を戦略的に形成し、国内および海外において適正な保護を図り、事業活動のために効果的に活用します。
  2. 第三者の知的財産権を尊重し、侵害予防の体制を構築します。
  3. 発明、イノベーションを奨励し、発明者等への適正な報奨制度を整備します。
  4. ブランドを育成し、保護することによって、ステークホルダーからの信用・信頼の獲得に取り組みます。
  5. グローバルに流通する模倣品の取締を強化し、その対策を確実に実施します。
  6. 知的財産情報を戦略的に活用する人材を育成し、そのための教育制度および環境を整えます。

 

2022年5月1日制定

2023年4月1日一部改定

グループ知的財産規定

グループ知的財産規定では、グループ会社の知的財産活動の推進を目的に、以下の事項を規定しています。
 

  • 知財ガバナンス(各社の執行役・取締役への報告および指導・監督)
  • 戦略的知財形成・分析・活用
  • グループ会社間のライセンス、委託研究・共同研究
  • ブランドの育成
  • 三菱商標
  • 模倣品対策
  • 侵害クリアランス対応
  • 発明報奨・人材育成

 

2023年2月1日制定

知的財産に関する推進体制

ガバナンス体制の強化

知財情報分析を活用しながら、事業部門と知財部門との「戦略対話」を推進し、戦略的な知財形成を目指しています。
また、戦略経営会議・取締役会への定期的な報告・審議によるガバナンス体制を強化しています。

模倣品の対策強化

海外を起点とする切削工具の模倣品に対する対策として、現地の実店舗で販売活動を行う違法業者を多数摘発してきました。また、2020年度からは、世界各国のオンライン販売サイトの監視と取り締りを強化しています。これまでに約1.5万件の模倣品販売サイトを削除しました。今後も、模倣品の実店舗販売の摘発および模倣品のオンライン販売サイトの監視を継続し、模倣品の根絶に取り組んでいきます。

戦略対話(知財情報の戦略的活用)

経営・事業・開発戦略および新規事業戦略に沿った知的財産活動として「戦略対話」を進めています。戦略対話では、事業・開発方針の検討段階から知的財産情報の戦略的解析を踏まえてカンパニー等事業部門および新規事業部門と対話し、事業展開に必要となる知的財産を戦略的に形成します。戦略対話をはじめとする各種の知的財産活動を通じて、新しい価値創造の取り組みを支援します。

ブランド化の推進

三菱マテリアルでは、新しいマテリアルをブランド化し、その構築を積極的に進めています。

GloBrass/ECO BRASS

GloBrass、ECO BRASSは、鉛含有量は0.09%以下に制御し、欧州のELV指令、RoHS指令、また飲料水などの各種規制に適応した鉛フリー快削黄銅合金です。

MOFC

MOFCは当社のコア技術である無酸素銅製造技術と材料設計技術を詰め込んだ高品質・高性能な無酸素銅伸銅品製品群です。
2021年、高強度・高耐熱に応える無酸素銅MOFC-HRが新たに加わりました。

発明報奨制度

三菱マテリアルでは、社員発明規定を設けその中で発明報奨制度を運用しています。

特許・実用新案・意匠の出願時及び登録時に定額の報奨を行っているほか、特許・実用新案・意匠が貢献した一定の利益がある場合に実績報奨を実施しています。

規定の改定により、報奨金額の上限の撤廃、秘匿発明への適用等、発明等の促進を図ってきました。今後も、発明者等へのインセンティブを充実させ、公平に評価する制度となるよう改善を行います。

技術契約リスク対応

秘密保持契約・共同開発契約・出願契約等の技術契約の確認、記録・参照等に関する契約管理システムを構築・運用し、秘密情報の漏えい防止、契約期間管理、契約内容の検討支援を行う等、当社の研究、開発、事業等の各分野で知的財産案件と連携した技術契約に対するアドバイスを行っています。

模倣品の対策強化

海外を起点とする切削工具の模倣品対策として、現地の実店舗で販売する違法業者を多数摘発してきました。また、2020年度からは、世界各国のオンライン販売サイトの監視と取り締りを強化し、約1.6万件の模倣品販売サイトを削除しました。今後も、模倣品の実店舗販売の摘発とオンライン販売サイトの監視を継続し、模倣品の根絶に取り組んでいきます。

知財教育

グループ社員に対して、知財に関する理解の促進と、事業活動における知財情報の活用、さらには有効な知財形成のための教育を実施しています。知財に関する基本的な知識の習得を目的とした階層別研修に加え、選抜型教育として、専門的・戦略的な知財活用を目的とした実践型の研修を実施しています。

知的資本としての知財

知財ミックス

事業戦略・開発戦略に沿った知財ミックス(特許、意匠、商標・ブランド、営業秘密およびノウハウ等)を戦略的に形成し、知財を含む無形資産の価値と効用を最大化する知財活動を展開しています。

件数データ(2025年3月31日現在)

特許出願

国内

158

海外

77

保有特許

国内

2,051

海外

2,316

保有意匠権

国内

80

海外

18

保有商標権

国内

305

海外

167

  • 出願件数は2024年4月から2025年3月まで。
  • 海外特許出願件数はファミリー数(PCT含む)。

三菱マテリアルグループでの活動

これらの「ガバナンス」「戦略対話・知財形成」「技術契約リスク対応」「知的財産教育」および「模倣品の対策強化」は、重要な取り組みと考えています。「グループ知的財産規定」に基づきながら、これら機能を有機的に連携させ、グループ全体の知財ガバナンス水準の維持向上を図るとともに、知財リスクの低減とグループ事業価値の最大化に貢献していきます。