DX戦略

データとデジタル技術を活用するDX戦略を強力に推進し、ビジネス付加価値・オペレーション競争力・経営スピードの向上の3本柱を推し進め、DXにおいてもリーディングカンパニーを目指します。 

 

当社グループは、グローバルで勝ち抜くための基盤づくりとしてDX戦略に取り組んでいます。2030年から2050年にかけての私たちの目指す姿に向けて、「今を強くする:今の事業をデジタルで強化する」「明日を創る:新たなビジネス・サービスを事業と共創する」「人を育てる:改革を継続的に進めるための仕組みと人材を強化する」をミッションとしたDX推進部を中心に改革に取り組んでいます。DX推進の3本柱であるビジネス付加価値、オペレーション競争力、経営スピードの向上を具現化するため、「顧客接点強化」「プロセス連携の強化」「経営スピードアップ」というDXの重要視点、さらに、これらの基盤となる「システム・データ基盤の整備」と「人材育成・風土醸成」に照らして、優先的に取り組むべきテーマを選定し、事業部門とIT/デジタル担当部署が一体となった活動を展開しています。当社グループでは、これらをスピーディに遂行することで、社会の変化、環境の変化、そして自らの変革に対応するリアルタイム経営を目指していきます。この取り組みを、2020年度より当社グループのDX「MMDX」と名付け、開始から2年以上が経過した2022年度より「MMDX2.0」として新たなフェーズへとシフトしています。 

 

DX戦略のフェーズ

MMDXでは、2023~2025年度を本格稼働フェーズとし、データ基盤の活用促進とともに、グループ全体でMMDXを加速させます。2026~2030年度は効果拡大・継続発展フェーズと位置付け、ERPを中心としたグループ展開を推進し、MMDXの定着維持・改善を狙います。

「DX銘柄2025」の「DX注目企業2025」に3年連続選定 

2025年5月に、経済産業省・東京証券取引所・独立行政法人情報処理推進機構が選定する「DX注目企業2025」に3年連続で選ばれました。 
 
「DX注目企業2025」選定は、当社におけるDXの成果や企業文化の醸成への取り組みが評価されたものです。当社事業戦略の重要な取り組みとして、E-Scrap(廃基板等)の取引業務をオンライン上で行うことのできる新プラットフォーム「MEX」(Mitsubishi Materials E-Scrap EXchange)を2021年12月より運用開始し、DXにより多くの取引先を集客するビジネスモデルを実現させています。また、2024年10月には、エンジニアのノウハウを凝縮したオンライン工具選定サービス「Tool Assistant」の提供を開始。ツール選定をDX化する本サービスの提供により、時間や場所に関係なく、熟練エンジニアの様に最適な工具を選ぶことが可能になり、切削加工業界の生産性向上や技術継承の課題解決に貢献しています。
 
当社グループは、「人と社会と地球のために、循環をデザインし、持続可能な社会を実現する」ことを「私たちの目指す姿」と定めています。これからも「MMDX2.0」を通じて経営改革を実現させ、目指す姿の実現に向けてさまざまな取り組みを実行していきます。 

推進体制

全社横断のバーチャル組織「DX推進本部」を設置し事業部門、システム部門、外部支援(アドバイザーやパートナー、スタートアップなど)から成る混成体制を構築しています。さらに、新IT機能会社「三菱マテリアルITソリューションズ株式会社」を設立し、当社グループのシステム部門の機能強化に取り組んでいます。

 

DX推進本部では、以下の役割を持った責任者を配置しております。
 

  • 本部長 石井 利昇:執行役常務/最高技術責任者(CTO(Chief Technology Officer))
    • ミッションと役割
      課題解決力の向上のための人材の技量、力量、スキルの強化。自律的・自発的・継続的な改善ができる職場づくりと、それを支える仕組みの強化。
      保有する要素技術の高度化と、活用技術の適用を拡大。
  • 副本部長 端山 敦久:最高デジタル責任者(CDO(Chief Digital Officer))
    • ミッションと役割
      DX施策の加速とさらなるビジネス効果の創出。データ基盤の整備と利活用。会計領域へのERP導入によるレガシーシステムからの脱却。高度デジタル人材の育成。当社グループ全体におけるデジタルマインドの醸成。
  • 副本部長 板野 則弘:最高情報責任者(CIO(Chief Information Officer))
    • ミッションと役割
      当社グループシステム部門の役割見直しと機能強化。国内における適切な情報セキュリティの整備および海外展開。新技術の積極的な取り組みによる当社グループの生産性・効率化の推進。

具体的な取り組み

1)製錬・資源循環事業 E-Scrapビジネスプラットフォーム(MEX)

当社は、世界中のリサイクラーから受け入れたE-Scrap(廃基板類を主としたリサイクル原料)を製錬し、有価金属へと再生する資源循環事業を行っています。当該事業において新たな付加価値を実現するため、サプライヤーであるリサイクラー・商社とスピーディ、かつ簡単に取引業務ができるE-Scrapビジネスプラットフォーム(MEX)を開発し、2021年12月にサービス提供を開始しました。MEXにより、E-Scrap取引に関わる情報の透明性を高めるとともに、利便性を高めることによって、より多くのサプライヤの満足度を向上させ、当社のE-Scrap納入先としての魅力を高めています。
MEXはサービス提供を開始して以降、機能追加・開発を進め、サービス向上を図ってきました。今後もE-Scrapビジネス全体に関係するステークホルダーに対してニーズのある機能(法令・規制対応、顧客業務の効率化等)を提供することで、当社のE-Scrapビジネスに不可欠なインフラを目指していきます。

2)加工事業 Tool Assistant

労働人口の減少に伴い、製造業では熟練労働者の不足が深刻化しています。この問題は、当社が関わる切削工具業界においても同様であり、工具の選定に必要な専門知識と経験を持つ人材不足が課題となっています。工具の選定には、加工形態や材種などの多くのパラメータがあり複雑な判断が求められますが、現状ではメーカーや販売店に問い合わせることが多く時間を要する作業となっています。さらに、将来的には、適切な選定ができる熟練者の数が減少する見通しであり、工具の迅速な選定がますます困難になることが予想されます。業界全体として、そのような課題に対する解決策が求められています。
そこで、当社では熟練エンジニアのノウハウを凝縮したオンライン工具選定サービス「Tool Assistant」を2024年10月31日より提供開始しました。「Tool Assistant」は、必要な情報を入力するだけで、初心者でもまるで熟練者のように短時間で最適な工具を選ぶことが可能です。これにより、工具選定における顧客の負荷軽減と生産性向上に寄与するだけでなく、技術継承の課題解決に貢献しています。

3)調達高度化

調達高度化では、一連の調達業務プロセスを標準化・デジタル化することで業務効率化・ガバナンスを強化すべく、調達業務のDXを推進しております。
ソーシング領域ではソーシング・サプライヤ管理システムを導入し、当社グループ会社の一部を含めた19拠点で運用を開始しました。これにより従前のメールや書面を用いた属人業務について、プロセスの標準化・デジタル化を実現し、作業状況の可視化によるガバナンス強化を実現しました。 
現在はソーシング領域の国内グループ会社展開を推進していくと同時に、パーチェイシング領域の業務プロセス標準化・デジタル化による業務効率化・ガバナンス強化を推進し、調達業務全体のDXを強化していく予定です。

4)ERP導入による業務プロセスの変革、オペレーションの強化

当社は、国内外のグループを含めて業務プロセス刷新・標準化を行うべくERP(Enterprise Resource Planning)導入に取り組んでおり、先行着手していた会計領域について2024年度から当社単体での運用を開始しました。業務・IT一体で改善・高度化が推進可能な基幹業務プロセスになるよう、全体最適を図り、経営の意思決定に必要な財務諸表データを瑕疵なく迅速に作成・提供し、外部環境の変化(M&A・会計制度・税制度等)に迅速に対応できる仕組みを構築しました。
現在では、国内12社、海外6社のグループ会社への展開も実現しており、25年度は国内16社、海外6社への導入作業も開始しています。

5)人材育成

デジタル技術の進化が加速する中で、企業の競争力を維持向上させるためには、デジタル領域に精通し、変革を推し進めることができる人材が不可欠と考えています。そのため、当社では、DXを推進するための人材確保を最重要課題として取り組んでいます。
現在、従業員がデジタル環境にスムーズに適応できるようデジタル技術の基礎から応用までを網羅した「共通デジタルリテラシー教育」を開講し、国内外のグループ会社問わず展開しています。また、より専門的なスキルを身につけた人材の育成のために「高度デジタル教育」も展開しております。

 

今後は、各部門のニーズに応じた研修プログラムを提供し、各拠点が自主的にDXを推進できる体制を整え、当社の持続的成長と競争力の強化を実現していきます。