循環型ビジネスモデルの全体像

循環型ビジネスモデルの全体像

当社グループは複合事業体であり、川上の資源から川中の素材、川下の加工品に至る幅広い技術・ノウハウを有しています。それらを全社横断的に活用することで、さまざまな廃棄物から資源を回収してリサイクルする循環型ビジネスモデルの構築に取り組んできました。各事業において、資源から素材、加工品、リサイクルを経て再び素材へと戻る循環型価値連鎖を追求することで、循環型社会システム(サーキュラーエコノミー)の実現に貢献していきます。
資源循環の拡大について、当社の強みである家電リサイクル事業での高度な分解・分離技術と、製錬事業でのリサイクル技術を活かして、その対象範囲、展開する地域、規模を拡大していくことでバリューチェーン全体の成長を実現していきます。
金属資源の循環では、使用済み、または廃棄された製品を回収し、分解・分離し、製錬等のプロセスに投入して有用な金属元素を取り出し、それらを高機能な素材・製品に加工・製造し、市場に供給していきます。
このように、資源を循環する「静脈」から高機能素材・製品の供給を行う「動脈」へ、そして市場を介してまた「静脈」へという、資源循環のデザイン・構築を実践していくとともに、再生可能エネルギー事業は創生した再生可能エネルギー電力をこれらの事業全体に対して供給し、カーボンニュートラル実現に向けたGHG削減も進めます。

循環型ビジネスモデルの追求

活動テーマ

2024年度の活動実績

自己評価

2025年度以降の活動目標・予定

リサイクル品の処理拡大

(金属事業(製錬部門))

直島製錬所のE-Scrap処理能力増強を計画

A

資源循環の推進に向けたネットワーク強化・規模拡大

小名浜製錬(株)小名浜製錬所にリサイクル原料前処理強化のための施設の設置および計画

E-Scrap類の処理拡大によるリサイクル率アップ

レアアース、レアメタルリサイクル事業の創出

資源循環システムの牽引者を目指す

トレーサビリティの徹底等による安心できるリサイクルシステムの提供

(金属事業(資源循環部門))

リサイクル金属ブランド「REMINE」のリリース

A

対象製品の拡充

E-Scrap原料のみによる製錬事業「Exurban PJ」の事業化検討

米国プロジェクトのFS、2024年度中の投資判断、他地域への展開検討

マレーシアにおける家電リサイクル事業化検討

法制化(2025年予定)後に投資判断、他地域への展開検討

ユーザーとの資源循環システムの実施・管理方法の確立、対象ユーザーの拡大

ユーザーとの資源循環システムの実施・管理方法の確立、対象ユーザーの拡大

家電リサイクル事業の拡大、自動化の推進、回収物高付加価値化

家電リサイクル事業の拡大、自動化の推進、回収物高付加価値化

家電リサイクル操業管理システム、型番認識技術の導入拡大(他拠点、上流工程)

家電リサイクル操業管理システム、型番認識技術の導入拡大(他拠点、上流工程)

HVモーターリサイクル技術、LIBリサイクル技術の実証

HVモーターリサイクル技術、LIBリサイクル技術の実証

PVリサイクルシステムの検討継続

太陽光パネルリサイクルシステムの事業化

フッ素資源リサイクル事業の推進

(高機能製品(電子材料))

リサイクル量は1,201t/年、対予算18%減

B

プラント安定稼働とリサイクル品使用量の達成

原料のリサイクル比率は15%

タングステンリサイクル事業の推進

(加工事業)

リサイクル率の拡大(対2017年度実績+229%)

A

リサイクル率の拡大(対2017年度実績+237%)

リサイクル回収量の拡大

リサイクル回収量の拡大(海外回収エリアの拡大)

自己評価 A:目標達成 B:概ね目標達成 C:目標未達成

最終処分場を必要としない資源リサイクル

非鉄製錬所 都市鉱山からの資源再生

三菱連続製銅法

当社が独自開発した三菱連続製銅法は、3つの炉を樋で連結することで、銅精鉱・リサイクル原料から連続的に粗銅が得られます。設備がコンパクトであり、省エネルギー、低コスト化にも役立つことから、環境負荷が極めて低く、高効率を特徴とする製銅プロセスです。

セメント工場 他産業からの処理困難物を受け入れて無害化し、安定処理

高温焼成プロセス

各種原料(廃棄物・副産物含む)は、原料工程で調合され、焼成工程で水硬性の鉱物になるように高温で焼成されます。最高温度(1,450℃)に達して所定の化学反応を終えた後、一気に冷却されてクリンカと呼ばれる中間製品となります。

  • MFC:仮焼炉。

セメント工場における廃棄物処理の特徴

  • 大量の廃棄物を処理可能
  • 廃棄物を無害化処理
  • 二次廃棄物が発生しない(最終処分場の延命)

家電リサイクル工場 使用済み家電製品を解体し、回収物を原料として供給

家電リサイクルによる環境負荷削減効果(2024年度のLCA分析評価)

家電リサイクルを実施して、使用済み家電製品から回収した資源を新しい素材に再利用した場合

項 目

実績値

GHG排出量削減効果(CO2換算)

15万t

天然鉱物資源消費量削減効果

40万t

エネルギー使用量削減効果(原油換算)

8万t

埋立処分量削減効果

11万t

上表にはフロン(エアコン、冷蔵庫、洗濯機の冷媒フロンおよび冷蔵庫の断熱材フロン)回収による影響は考慮しておらず、回収フロン約524tをCO2削減量として換算すると約115万tとなります。

  • LCA評価対象の家電リサイクル工場は以下となります。
    • 北海道エコリサイクルシステムズ(株)
    • 東日本リサイクルシステムズ(株)
    • 関西リサイクルシステムズ(株)本社工場・第二工場
    • パナソニック エコテクノロジー関東(株)
    • 中部エコテクノロジー(株)
  • 環境負荷削減効果の評価には「国立研究開発法人 産業技術総合研究所 AIST-IDEA Ver.3.5」を使用しています。
ロボットによる薄型テレビのねじ外し作業
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ロボットによる薄型テレビのねじ外し作業

銅製品の安定供給に向けて

当社は、環境に配慮した銅鉱山から産出された銅精鉱を使用し、三菱連続製銅法の優位性を活かしながら世界最大規模の処理能力を誇るリサイクル事業を展開し、よりクリーンな非鉄金属素材を安定供給しています。EV化、IT化、脱炭素社会への移行等に伴い、銅や貴金属の重要性が増す中で、環境に配慮した供給責任を果たすことで、社会の発展と持続可能な社会の構築に貢献していきます。

マテリアルグリッド体制

超硬工具の安定供給に向けて

超硬工具の主原料となるタングステンは、安定供給の確保が政策的に重要であるとされるレアメタルの一種です。原料鉱石が一部の国や地域に偏在しており、国際関係の不安定化に伴って価格の高騰や入手リスクが顕在化する可能性があります。当社では、使用済み超硬工具のリサイクル活動を積極的に推進し、今後もタングステンの安定供給に取り組みます。

2020年度

実績

2021年度

実績

2022年度

実績

2023年度

実績

2024年度

実績

2025年度

目標

タングステンリサイクル

原料比率

41.8%

43.5%

50.0%

56.0%

58.6%

60.0%以上

タングステンの資源化プロセス

各事業におけるリサイクル

金属事業

レアメタルのリサイクル

E-Scrap等にはレアメタルのPGM※1が含まれており、当社グループの小名浜製錬(株)※2では、直島製錬所で得られるPGMの中間品等を精製してメタルや化合物の形で製品化しています。
特に、自動車や電気・電子分野の重要な材料である白金・パラジウムについては、市場での信頼性を確保するためにLPPM(London Platinum & Palladium Market)へのブランド登録申請を行い、2012年9月に認証を取得しました。今後も、製品の品質向上に努めるとともにレアメタルの安定供給を図ります。

  1. Platinum Group Metals:白金族金属。
  2. 2025年4月1日付で、マテリアルエコリファイン(株)の事業を、吸収分割により小名浜製錬(株)ほか2社に移管しました。

レアメタルのリサイクルの流れ

スクラップのリサイクル

非鉄製錬所では製錬技術を活かしたリサイクルを行っています。廃家電や廃自動車等から出るシュレッダーダストや使用済みバッテリー、基板・コネクタ等のE-Scrapといった各種スクラップを受け入れ、熱エネルギーを回収したうえで、有価金属を回収し、再資源化しています。

スクラップ処理量の推移

家電リサイクル

家電製品は、鉄・アルミニウム・銅等の金属や、ガラス、プラスチック、ゴム等、多くの素材をさまざまに組み合わせてつくられています。家電メーカーと連携のうえ操業を行っている家電リサイクル工場※1では、手解体および破砕・選別処理を行い、部品・素材の選別を高度化し、回収した素材の付加価値および再商品化率を向上させています。また、銅系回収物やプリント基板は、銅製錬プロセスを利用して銅や貴金属を回収し、当社グループのシナジー効果を最大限活用しています。2024年度に当社出資の5社6工場で家電製品2,613千台(6社7工場では3,516千台)をリサイクルしたことにより、削減された埋め立て処分量は12.1万t※2に相当します。

処理台数の推移

  1. 主要パートナー:(株)日立製作所、シャープ(株)、パナソニック(株)。
  2. LCA評価対象の家電リサイクル工場は以下となります。 
  • 北海道エコリサイクルシステムズ(株)
  • 東日本リサイクルシステムズ(株)
  • 関西リサイクルシステムズ(株)本社工場・第二工場
  • パナソニック エコテクノロジー関東(株)
  • 中部エコテクノロジー(株) 

国内初、リサイクル金属ブランド「REMINE」シリーズの製品供給
~リサイクル材料含有率を国際規格ISO14021※1に準拠し算出~

当社は、非鉄金属製品におけるリサイクル材料の含有率を明示した、国内初※2となるリサイクル金属ブランド「REMINE」を立ち上げ、2024年1月にリサイクル材料含有率100%の「電気錫」と99.6%以上の「電気鉛」の販売を開始し、2024年12月にリサイクル材料含有率92.2%以上の「電気ビスマス(Bi)」、100%の「Pt(白金)スポンジ」、「Pd(パラジウム)パウダー」、「三酸化タングステン(WO3-5)」の4製品をブランドに追加しました。
REMINEとは「繰り返し・再び」を意味する英語の「RE」と「鉱山」を意味する「MINE」を組み合わせた造語です。サステナブルな社会の実現に向け、資源循環・環境負荷低減の観点から、サプライチェーンにおける製品中の原材料などの情報の透明性並びに追跡可能性(トレーサビリティ)を確保することはステークホルダーに対する責任であるとともに、製品が環境に与えるインパクトを数値化することが、より一層求められています。
「REMINE」シリーズは、当社が培ってきた強みであるリサイクル技術を用いた非鉄金属製品です。社会的なニーズに対し、国際規格ISO14021(JIS Q14021※3)に準拠してリサイクル材料含有率を算出し、第三者機関(SGSジャパン(株))による検証を受け、より高い信頼性を確保しています。
下記専用WEBサイトより、詳しい製品情報の参照が可能です。

当社グループは、「REMINE」シリーズ製品の供給を通じて、持続可能な社会の実現に貢献していきます。

  1. ISO14021は製品の環境情報に関して曖昧な表現の排除や検証に必要な情報開示が求められる国際規格。この規格の中に、リサイクル材料の定義並びにリサイクル材料含有率の算出手法が明記されています。
  2. 非鉄金属のリサイクル材料含有率をISO14021に準拠して算出し、第三者の検証を受けるという方法において国内初。2023年12月現在、当社調べ。
  3. JIS Q14021の規格は、ISO14021を元に作成された日本産業規格であり、国際規格ISO14021と共通の内容。

高機能製品(電子材料)

フッ素資源リサイクル

当社グループの三菱マテリアル電子化成(株)では、フッ化水素酸をはじめ、各種半導体製造用材料、難燃剤や帯電防止剤等の機能を有する材料等、さまざまなフッ素化合物の製造を行っています。2006年度からフッ素化合物を使用するユーザー各社から排出されるフッ化カルシウム廃棄物を回収し、蛍石原料の代替とするフッ素資源リサイクルを行っています。さらなる技術改善を行い、フッ素資源リサイクルを推進していきます。

加工事業

タングステンのリサイクル

希少な金属を含む廃棄物は、希少金属の含有率が高く、天然資源に比べてより効率良く希少金属を得ることができます。当社グループでは、新たにドイツの原料メーカーが加わったことで、超硬工具の主原料であるタングステンを原料から製品まで一貫生産できるメーカーの特性を活かして、グローバルに使用済み超硬工具のリサイクルに取り組み、原料の安定確保にもつなげています。

関連事業

廃棄物・副産物のリサイクル

1,450℃の焼成工程を有するセメント工場では、処理困難な産業廃棄物等を無害化処理し、かつ、二次廃棄物を発生させることなく有効利用することができます。石炭灰、建設発生土、汚泥、焼却灰、銅製錬所から副産される銅スラグ、石膏等はセメントの原料として、廃プラスチック、廃タイヤ、木くず等は熱エネルギーとして利用され、セメントに生まれ変わります。