また、現在、ドローンの有用性をさらに高めるため、自動航行システムにより得られた複数の撮影画像をオルソ化*して数値表層モデル(DSM)**を作成し、これらを解析することで森林蓄積(木が生長した量を体積で表したもの)の把握に活用する等の分野で試験的に取り組んでいます。
一般的に森林蓄積を把握するためには、森の中で樹木を一本ずつ数える等の地道な調査を行うため、膨大な時間と労力が必要になります。また、倒木処理時の樹木跳ね返り、急傾斜地での転落、クマ、スズメバチ、マダニ等との遭遇等、調査作業自体も常に危険と隣り合わせています。こうした課題解決に向け、ドローンを活用して森林蓄積を把握する技術を確立できれば、安全かつ効率的に作業を行うことが可能になり、林業分野で盛んに叫ばれている「軽労化」、「低コスト化」に向けた新たな突破口の一つとなり得ることから、少しでも早く実務に取り入れられるよう試行錯誤を続けています。
さらに、ドローンは日常のモニタリング活動においても活躍が期待されます。具体的な活用例としては、猛禽類の巣内の雛の生育状況をモニタリングする際、十分に距離を取り繁殖に影響しないよう配慮しながら上空から確認したり、赤外線サーモグラフィカメラを搭載して野生動物の生息状況を把握したりすることが考えられます。また、地上の視点とは異なり、上空からの景観スケールで森林の変化を確認することが可能になる等、実に多様な活用方法が考えられ、モニタリングの質を一層向上させることができると思われます。
ただし、ドローンはあくまでも技術補助の一部に過ぎず、従来の森林管理の手法が重要であることには変わりがありません。今後も現場において現物に触れ、実態を見極めながら目標とする森林の姿へ近づける森林管理を継続するとともに、ドローンという“新たな視点”も加えつつ、適切に社有林を守って行きたいと考えています。
*航空写真では、写真の中心から外周に行くに従ってひずみが生じ、そのままでは地図と重ね合わせたり、分析に用いることができない。このひずみを修正することを「オルソ化」といい、補正後の航空写真を「オルソ画像」と呼ぶ。
**数値表層モデル(DSM; Digital Surface Model)のこと。建物や樹木などの地上物を含めた高さを表現したデータ。