森林には、木材生産のほかにも二酸化炭素の吸収を始めとする地球環境の保全や、生物多様性の保全、土砂災害防止、水源かん養などの多面的機能があります。そうした多面的機能を発揮するには、森の状態を調べ、適切に管理しなければなりません。
このコーナーでは、豊かな森を次世代に残すために、わたしたちが日頃、どのような取り組みを行っているかをご紹介します。

  • 本コーナーのコンテンツは、2014年12月から2022年1月にかけて、当社ホームページにて「森の守り人(もりびと)」として掲載をしていたコラムです。2022年度より、当社の広報誌『WITH MATERIALS』の「森とマテリアル」、ならびにInstagram「マテリアルの森」にて更新しています。
  • 本コーナーに記載の会社名・組織名は掲載日時点のものです。

アーカイブ

2014年12月

森を調べるには冬がいい!

冬の早来山林
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冬の早来山林

三菱マテリアルの社有林は全国に約14,500haありますが、そのうちの8割、約11,500haが北海道にあります。北海道の冬は長くて、寒くて、雪が多い大変な季節ですが、森を管理する私たちには森を調べるために都合が良い季節でもあるのです。


都合が良いことの一つ目は、笹などの下草が雪に隠れる上に木々の葉も落ちるため見通しが良く、森の中まで入りやすいこと、二つ目には熊は冬眠し、スズメバチも活動しなくなるために安心して森の中を歩きまわれることです。

毎年秋から冬にかけて行う「間伐」、「皆伐」の準備として、その半年以上前から作業予定場所の木の種類、幹の太さ、本数などを調べて行きます。日中でも氷点下という厳しい寒さのなか、車はもちろん、柔らかい雪が積もると徒歩でも移動できないため、スノーシューやスキーを使って森に入ります。


冬季調査は大変な作業ですが、持続可能な森林として維持するために毎年続けています。

トドマツ立木調査
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トドマツ立木調査
昼食風景
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昼食風景
森林踏査
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森林踏査

2015年4月

早春の作業は「山火事予防」と「クマ対策」から

早春の早来社有林
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早春の早来社有林

本州では日々新緑が眩しくなる季節、北海道にもようやく春が訪れ、雪の下からふきのとうや福寿草が顔を出してきます。この時期は空気も乾燥し、一年で最も林野火災の多い時期です。 そのため北海道では、4月~5月にかけて火災予防強調期間を設定し、防火に努めています。

 

「三菱マテリアルの森」を管理するマテリアルリアルエステート㈱森林部でも例年、この時期に「山火事予消防訓練」を実施しています。
社有林内で火を使う作業時の延焼防止機材として“ジェットシューター(背負い式消火水のう)”を準備しており、イザという時に全員が使えるよう定期的に訓練しています。背中に18㎏の水を背負い手動式ポンプで放水するのは重労働ではありますが、延焼を防ぐためには必須の訓練ですので、毎回、気を引き締めて実施しています。

また、この時期はヒグマが冬眠から目覚め、空腹のため凶暴化する季節でもあるため、「春のヒグマ注意特別期間」にも指定されています。遭遇時の撃退手段である“クマ除けスプレー”は、個人一人一本の必須携行品としていますが、突然、クマに遭遇しても慌てることのないように、この時期に併せて訓練しています。ときおり噴射訓練中に、急に風向きが変わり、訓練者自身がその威力を体感するハプニングもありますが、日々“守り人”としての備えを固めながら、万が一に備えています。

山火事予防訓練開始!
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山火事予防訓練開始!
ジェットシューターを使った消火訓練
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ジェットシューターを使った消火訓練
クマ除けスプレーは必須アイテム
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クマ除けスプレーは必須アイテム

2015年9月

社有林経営と生物との関わりあい

三菱マテリアルの社有林では、製品として木材を伐採し出荷していますが、同時に、そこにはキタキツネ、エゾモモンガなどの哺乳類、オオタカやクマゲラなどの鳥類など、とても多くの生物が生息しています。そのため私たちは、日々のモニタリング活動などを通じて、彼らの貴重な生活の場を奪うことのないよう常に気を配っています。


ところで、「木を伐るという行為自体が、生物にとって悪影響を及ぼすのではないか?」といった疑問を持たれる方もいらっしゃると思います。たしかに、東南アジアなどで見られるような、無計画に森林を一気に伐採する方法は、生物への悪影響が大きいと思われます。しかし、たとえば過去に人の手によって植えられた樹木は、何も手を入れずに放っておくと、木と木の間隔が狭くなり、地面に十分な光が届かなくなってしまいます。そこで、適度に伐採してある程度光の入る空間をつくり、地面を明るく保ってあげると、そこに集まる生物が増え、生命を育む環境が生まれます。


それでは、育てた木をすべて伐採することは、自然破壊になるのでしょうか。実はこれも、必ずしも生物にとってマイナスの影響ばかりであるとは言えないのです。たしかに、森林がなくなれば、そこに暮らしてきた生物の数が一時的に減少するかもしれません。しかし、それまで変化のない森林であった中に、新しい空間が生まれることは、生物にとって新たなチャンスにもつながります。たとえば、森林の中に草原が生まれれば、バッタなど昆虫にとって生活範囲が広がり、生息数も増えます。また、オオタカやノスリなどの猛禽類にとっても地上が見渡しやすくなり、野ネズミなどの獲物を捕まえやすくなります。


自然界においては、台風や山火事、その他のさまざまな自然現象によって、森林が草原に変わり、長い年月を経て再び森林に変わる、というように、森は絶えず変化を繰り返しています。そしてそこに生きる生物も、彼らにとってふさわしい環境を見つけ出しながら日々暮らしています。木の伐採は、一見すると生物にとって悪影響を与えるように思われがちですが、こうした自然界の環境変化に近い形で、一定の気配りのもとで行うのであれば、生物の暮らしを守ることができるのです。


私たちは、今後も社有林を経営していく中で、そうした自然界の仕組みを十分に理解しながら、生物の多様性に配慮した社有林づくりを心がけていきたいと思います。

早来(はやきた)山林の林道を行列して歩くシカ
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早来(はやきた)山林の林道を行列して歩くシカ
早来山林の定点カメラに写ったキタキツネ
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早来山林の定点カメラに写ったキタキツネ
早来山林を上空から撮影。
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早来山林を上空から撮影。

伐採により生まれた草原と、その周りに残した{天然生林}^{てんねんせいりん}(自然に発芽した樹木でできた林)、カラマツの{造林地}^{ぞうりんち}(人の手で植えられた苗木でできた林)がモザイク状にバランスよく配置されている。

森林には、木材生産のほかにも二酸化炭素の吸収を始めとする地球環境の保全や、生物多様性の保全、土砂災害防止、水源かん養などの多面的機能があります。そうした多面的機能を発揮するには、森の状態を調べ、適切に管理しなければなりません。
このコーナーでは、豊かな森を次世代に残すために、わたしたちが日頃、どのような取り組みを行っているかをご紹介します。

  • 当社は、社有林管理の実務を子会社である「マテリアルリアルエステート㈱」に委託しておりましたが、2018年7月1日付で三菱マテリアル㈱総務部総務室が所管することと致しました。

2016年4月

雪解けは植栽の季節

植栽(しょくさい)の様子
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植栽(しょくさい)の様子
カラマツの仮植(かしょく)
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カラマツの仮植(かしょく)

雪が解け、草木が目覚める春は、一年の中で苗木を植えるには最も適した季節であり、三菱マテリアルの社有林では毎年大忙しになります。特に、北海道にある社有林では、成長が早く強度も十分なカラマツや、北海道固有の樹種であるトドマツなどを1ヘクタール当たり約2000本と、非常にたくさん植えています。


まず植えようとする土地に適した苗木選びにはじまり、苗木が成長しやすい環境を作るための{地拵}^{じごしら}え(ササなどを刈り払い、取り除くこと)、運搬した苗木が乾燥しないように{仮植}^{かしょく}(植える直前まで土をかけておくこと)を行ってから、{鍬}^{くわ}などの器具を使って一本一本を丁寧に植えていきます。こうした作業は機械ではなく人の手で行うため、とても大変ではありますが、植えた木々が成長した姿を想像すると期待が広がり、いつの間にか苦労を忘れてしまいます。

 

もちろん、一度植えてしまえばそれで終わりというわけではありません。木が成長しやすいように{下刈}^{したがり}(苗木周辺の雑草を刈ること)や{間伐}^{かんばつ}(木の間隔を保つために適度に伐採すること)などを適切に行い、何十年もの長い年月で木を育てていきます。こうした中で、CO2吸収や水土保全などの機能であったり、その成長段階に応じて多様な生物の生活の場になったりと、木は様々な価値を発揮しています。最終的には、木材資源として有効活用するために収穫することになりますが、また苗木の植栽を繰り返すことで、木はその価値を保ち続けています。

私たちは、このように「伐る ⇒ 植える ⇒ 育てる」という森林のサイクルを確実に行って森の持つ多様な価値を向上させ、未来に繋ぐことで、人と社会と地球のために貢献していきたいと考えております。

トドマツの苗木
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トドマツの苗木
カラマツ(植栽後6年目)
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カラマツ(植栽後6年目)

2016年7月

JICA研修生がやってきた! ~生物多様性保全の取り組み~

JICA研修生と一緒に
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JICA研修生と一緒に

当社社有林管理の実務を担うマテリアルリアルエステート㈱森林部では、独立行政法人国際協力機構(JICA)が進める2016年度課題別研修「生物多様性保全のためのGIS・リモートセンシングを利用した情報システム及び住民参加型保全」の一環として、2016年7月21日、北海道札幌市の同社森林部事務所において、エクアドル、カンボジア、ミャンマー、ラオス及びボツワナからの海外研修生7名を受け入れ、実務に即した研修を実施しました。

JICAでは、途上国において、生物多様性に関する情報をより高度な手法で管理するための支援策として、林業・森林管理に携わる海外の研修生に日本の先進的な取り組みを紹介しています。そこで、今回、三菱マテリアルの社有林における全地球測位システム(GPS)、地理情報システム(GIS)などの技術を用いた生物多様性保全の取り組みに注目いただき、本研修が実現しました。


「GPS」とは、カーナビゲーションやスマートフォンなどでも身近な、地球上の位置の把握や記録が可能なシステムのことです。また、「GIS」とは、GPSで取得した位置情報や地形図などを、一つの図面上に重ね合わせて表示できるシステムのことです。
当日は、希少種であるオオタカやクマゲラの巣の位置をGPSで記録し、GIS上で地図として広く周知することで、彼らの繁殖時期に悪影響を与えないようにしていることや、尾根や沢など動植物の生息環境として重要な場所をGIS上の図で色分けして管理し、極力手を加えないことで生物多様性の保全に役立てていることなどを説明しました。

 

研修生からは「民間組織の取り組みが成功していることに驚いた」、「生物多様性の保全を森林管理に取り入れる良いアイデアが得られた」など、母国においても実践可能な取り組み事例として、高い評価をいただくことができました。

 

私たちは今後も社有林に生息する生物の多様性を尊重し、保全する取り組みを続けることにより、さまざまな環境問題の解決に貢献したいと考えております。

社有林の概要説明の様子
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社有林の概要説明の様子
GPS・GIS活用事例の説明の様子
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GPS・GIS活用事例の説明の様子

2016年7月

夏は下刈したがり

下刈の様子①
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下刈の様子①
下刈の様子②
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下刈の様子②

毎年夏は、三菱マテリアルの社有林においても植物が最も盛んに成長する季節です。カラマツをはじめとする小さな{苗木}^{なえぎ}は、太陽の光をたくさん浴びて「我先に」と空に向かって背を伸ばし、数十年後には20mを超えるほどに成長します。しかし、{植栽}^{しょくさい}(苗木を植えること)後3年〜5年の間は、苗木の成長が雑草に比べて遅いため、周りを雑草に囲われてしまい、太陽光を十分に得られずに枯れることがあります。 そこで、周辺の雑草を刈り払う「{下刈}^{したがり}」を行うことで、苗木の成長を守っています。


下刈は、まず作業前に苗木の{樹高}^{じゅこう}(地面から木の頂点までの高さ)を測定し、周囲の雑草の生え具合を確認します。その上で、{刈払機}^{かりはらいき}を使って苗木を傷つけないよう丁寧に雑草だけを刈り取ります。

 

三菱マテリアルの社有林では、毎年数百haもの面積(平成27年度は約200ha、東京ドーム約42個分)で下刈を行っていますが、人の手による作業のため、多大な時間と労力を要します。また、炎天下での作業のため、熱中症やスズメバチ等の危険生物に注意する必要があります。さらに、刃物を扱うため、作業を行う人同士が十分に距離をあけ、傾斜地では上下方向に並ばない等、安全に対する配慮も必要です。

このように、下刈は手間のかかる作業ではありますが、今は小さな苗木であっても一本一本が立派に成長し、数十年後には素晴らしい森に変化してくれることを期待しながら、私たちは社有林を大切に育てています。

2016年10月

秋は間伐かんばつ

夏が終わり、秋の足音が聞こえてくる頃、三菱マテリアルの社有林ではカラマツをはじめとする植栽木を対象に{間伐}^{かんばつ}を行います。


間伐とは、成長にともなって混みすぎた林の木を一部抜き伐ることです。最初は小さな苗木ですが、植えてから15年もすれば大きく成長し、隣り合う木と木の枝や葉が重なりやすくなります。そのまま放置すれば太陽の光が十分に届かず、幹の細い弱い木になってしまいますが、間伐を行うことで林の中に差し込む太陽の光を増やし、再び活発な光合成を促すことで、立派な太い木を育てることができます。
また、林の中が明るければ、木の周りにさまざまな植物が集まって力強く根を張り、地下水を適度に溜めてくれる機能もあることから、豪雨等の災害時に土砂の流出を防ぐことにも繋がります。


一口に間伐と言っても、木々の混み具合は場所ごとに異なるため、方法は必ずしも同じではありません。そこで重要な作業が{選木}^{せんぼく}です。
木の形状、幹の太さ、{樹高}^{じゅこう}(木の高さ)、{樹冠長率}^{じゅかんちょうりつ}(木の高さに対し、葉のついた枝がある部分の割合)、隣の木とのバランスなど、さまざまな視点から判断することで、実際の森林の状況に応じて木を伐る量、木の残し方などを変えています。選木によって将来の森林の姿が決まるとも言えますので、三菱マテリアルの社有林を管理するマテリアルリアルエステート㈱森林部では、定期的な勉強会の開催や作業現場から提案を受けた改善案の振り返りなどを通じて、選木の技術を高める取り組みを進めています。


私たちは適切な間伐によるたくましい森林づくりを目指しており、間伐により伐り出した木材についてもできる限り再生可能な資源として世の中に送り出すことで、人と社会と地球のために貢献してまいります。

間伐作業の様子
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間伐作業の様子
間伐により明るくなった林内
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間伐により明るくなった林内
選木に関する勉強会の様子
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選木に関する勉強会の様子

2017年1月

冬は主伐しゅばつ

三菱マテリアルの社有林では、一年で最も寒さの厳しい冬に「{主伐}^{しゅばつ}」を行います。

 

主伐とは、森林が持つ多様な公益的機能のうち、木材としての利用に向け、十分に成長した樹木を伐採し、農作物と同じように収穫することを意味しています。
冬には葉が落ちて樹木の成長が止まり、地面から水分を吸い上げる量が減るため、樹木内部の含水率が低くなり、くるいや割れが少ない良質な木材を生産することができます。また、地面が凍結により固まるため、作業車両が林内を走行しやすいことも冬に主伐を行うメリットの一つです。

 

主伐の実施においては、特に生態系への影響を配慮し、限られた小さな範囲で行います。
特に、{尾根林}^{おねりん}(山の尾根に成立している林のこと)や{河畔林}^{かはんりん}(川の両岸に成立している林のこと)は生物の移動経路や生活空間として重要であると同時に、防風、河川への土砂流入防止、河川水温の安定といった多面的な効果もあるため、敢えて伐採せずに保全区域として残すことで、生物多様性の保全に配慮しています。

 

ところで、樹木が二酸化炭素(CO2)を吸収する能力は若齢~中齢期がピークで、中齢期を過ぎると徐々に落ちていきます。そこで、一定のタイミングで収穫し、新たな植栽により一から森林を育てることは、森林のCO2吸収能力を長期的に維持する上で重要であると言えます。また、樹木が吸収したCO2は炭素化合物として樹木内部に留まるため、従来同様に「家」や「紙」など様々な用途に木材を利用することで、大気中のCO2の削減に貢献することにも繋がります。

 

このように、尾根林、河畔林を残すなど極力人の手を加えないことが森林価値の向上に繋がる一方で、植え、育て、伐るなどの積極的な人の関与が森林価値を高めることもあるのです。


私たちは、今後も森林全体の公益的機能をより効果的に発揮させることを意識し、森林の特徴を見極め、保全及び木材生産を計画的に進めてまいります。

冬の伐採作業
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冬の伐採作業
主伐において敢えて残した保全区域(尾根林)
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主伐において敢えて残した保全区域(尾根林)
主伐により伐採した木材の積み上げ作業
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主伐により伐採した木材の積み上げ作業

2017年4月

手稲さと川探検隊が冬の森遊びを満喫!

イタヤカエデの樹液採取を体験
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イタヤカエデの樹液採取を体験
そり遊びを楽しむ子どもたち
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そり遊びを楽しむ子どもたち

2017年2月25日、三菱マテリアルの手稲山林(所在:北海道札幌市手稲区)の一部を開放し、「手稲さと川探検隊(代表:鈴木玲氏)」が自然体験活動を開催し、札幌市内の子どもと大人約30名、当社社有林管理の実務を担うマテリアルリアルエステート㈱森林部から2名が参加しました。

 

「手稲さと川探検隊」は、主に札幌市手稲区内を活動場所とする市民団体です。2004年7月の設立以降、子どもと大人が身近な自然を体験し、自然との付き合い方や自然を守り育てる感性を学ぶことで、地域の自然環境の保全のための生物調査を継続的に行うことを目的に活動されており、今回は「冬の森遊び」をテーマとして午前の部でイタヤカエデの樹液採取、午後の部でそり遊びが行われました。

メープルシロップの原料となる樹液が採れる木としては、カナダの「サトウカエデ」が有名ですが、北海道に生育するカエデの仲間「イタヤカエデ」の樹液からも作ることができます。まず、森の中に入り準備体操した後、スノーシューを履いてお目当てのイタヤカエデをみんなで探しました。北海道の2月はまだとても寒く、手稲山林内のイタヤカエデは他の落葉広葉樹と同様に、葉を付けずに雪の中で春の訪れをじっと待っていますが、幹の中では地面から吸い上げた水分が早くも流れはじめています。幹の表面から1cm程の深さで穴を開けると、透明な樹液がしみ出すので、ペットボトル容器を設置して樹液を採取します。樹液をじっくり煮詰めるとメープルシロップが完成しますが、採れたばかりの樹液だけでも「なんだかちょっと甘い!」と子どもたちは目を丸くし、回収した樹液を集めて作るメープルシロップの完成が待ち遠しそうでした。

 

森の中でお弁当を食べた後は、近くの沢でそり遊びを楽しみました。はじめは地面がでこぼこしていて上手く滑ることができませんでしたが、何度も滑るうちに雪がなじみ、立派な自然のコースができあがりました。  子どもたちは"滑ってはスタート地点に戻る"を何度も繰り返し、大はしゃぎでした。

2017年4月

日常のモニタリング活動について

フクジュソウ
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フクジュソウ

三菱マテリアルの社有林では、四季折々の森の移ろいを観察したり、森林の健康状態に異常がないかを確認したりと、日常的にモニタリング活動を行っています。


雪解けの季節である春は、林内の動植物の動きが特に活発になります。陽当たりの良い斜面からはフキノトウが真っ先に顔を出し、沢にはミズバショウが咲き、フクジュソウ(北海道レッドデータブックで絶滅危急種に指定)などの希少な植物を見ることもできます。また、春は鳥たちにとって繁殖期でもあり、林内にはさまざまな鳥類が訪れます。目視で鳥の種類を判断することはとても難しく、鳴き声を手掛かりに確認できる限りの生息状況を記録していますが、絶滅のおそれのある鳥を確認した場合には、繁殖期が終わるまでは極力巣に近づかないようにするなど、種の保存に努めています。

動植物の観察とともに、樹木の成長を見守ることも重要です。樹木が枯れたり腐ったりする原因となる有害な病害虫が発生していないか、大規模な風倒被害(強風により木が倒れてしまうこと)が発生していないかなどを定期的に確認し、適切な対応を行うことで、被害の拡大を未然に防いでいます。


私たちは今後も地道なモニタリング活動を通じて、社有林における生物多様性を保全しながら、適切な森林管理を行ってまいります。

フキノトウ
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フキノトウ
ミズバショウ
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ミズバショウ
オオルリ
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オオルリ
風倒木処理
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風倒木処理
モニタリング報告書
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モニタリング報告書

2017年7月

地域の皆さまに愛される社有林を目指して

柔らかな日差しが差し込む林内(手稲山林)
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柔らかな日差しが差し込む林内(手稲山林)

三菱マテリアルの森では、生物多様性の保全とともに、森林の多面的機能を高めながら木材生産やCO2吸収の促進を目的として「資源林」の整備を進める一方、都市近郊に位置する社有林については、地域の皆さまなどに豊かな自然環境をより身近に楽しんでいただける「環境林」と位置付け、その一部を開放しています。


札幌市手稲区に所在する手稲山林は、札幌市内中心部からの交通アクセスが良好な場所にありながら、豊かな森林に囲まれた素晴らしい環境にあることから、札幌市に対して札幌市市民の森、自然歩道、青少年キャンプ場などの用途で一部を提供したり、地元NPO団体「手稲さと川探検隊」が主催する環境教育、地元小学校のスキー学習の場、大学等研究機関の研究フィールドなどとして広く開放しています。

環境林における私たちの大事な務めは、地域の皆さまにより有意義に社有林を活用していただけるよう、それぞれの用途に適した環境に維持することです。混み過ぎて日が射さず暗い林は間伐することで林内を明るくし、様々な動植物が棲みやすく、水源涵養機能等の多面的機能を高める森づくりに努めるのはもちろんのこと、林内で倒木の危険がある枯木等を見つけたときは速やかに除去し、林内の安全な場所に移しています。また、雪解けや雨の後に、自然歩道でぬかるみ等、歩き難い場所が生じた場合は、利用者が安心して歩けるようにするため、木材を敷き詰めるなどの路面整備も行っています。


社有林は、私たちの大事な財産であると同時に、その地域を形成する重要な環境要素の一つでもあります。私たちは、これからも適切な社有林運営とともに、地域の皆さまに愛される森林環境の整備に努めて行きたいと考えています。

自然歩道のぬかるみを整備する様子(手稲山林)
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自然歩道のぬかるみを整備する様子(手稲山林)
市民の森で危険木等を処理する様子(手稲山林)
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市民の森で危険木等を処理する様子(手稲山林)

2017年10月

ドローンを活用した森林管理とモニタリング

ドローン調査作業
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ドローン調査作業

近年、ドローン(無人航空機)がさまざまな産業分野で応用されつつありますが、林業分野においても活用事例が拡大しており、三菱マテリアルの森でもいち早くドローンを導入し、広大な森林を上空から撮影して得られる情報を活用して森林管理に役立てています。
具体的には、人工林の生育状況の把握、台風等の自然災害による被害状況の把握、伐採・{地拵}^{じごしらえ}(落ちている枝等を整理したり笹草を刈り払って、苗木を植えられるようにすること)等の事業現場を図化して効率的な作業に活かすこと等が挙げられます。

また、現在、ドローンの有用性をさらに高めるため、自動航行システムにより得られた複数の撮影画像をオルソ化して数値表層モデル(DSM)**を作成し、これらを解析することで森林蓄積(木が生長した量を体積で表したもの)の把握に活用する等の分野で試験的に取り組んでいます。

 

一般的に森林蓄積を把握するためには、森の中で樹木を一本ずつ数える等の地道な調査を行うため、膨大な時間と労力が必要になります。また、倒木処理時の樹木跳ね返り、急傾斜地での転落、クマ、スズメバチ、マダニ等との遭遇等、調査作業自体も常に危険と隣り合わせています。こうした課題解決に向け、ドローンを活用して森林蓄積を把握する技術を確立できれば、安全かつ効率的に作業を行うことが可能になり、林業分野で盛んに叫ばれている「軽労化」、「低コスト化」に向けた新たな突破口の一つとなり得ることから、少しでも早く実務に取り入れられるよう試行錯誤を続けています。

 

さらに、ドローンは日常のモニタリング活動においても活躍が期待されます。具体的な活用例としては、猛禽類の巣内の雛の生育状況をモニタリングする際、十分に距離を取り繁殖に影響しないよう配慮しながら上空から確認したり、赤外線サーモグラフィカメラを搭載して野生動物の生息状況を把握したりすることが考えられます。また、地上の視点とは異なり、上空からの景観スケールで森林の変化を確認することが可能になる等、実に多様な活用方法が考えられ、モニタリングの質を一層向上させることができると思われます。

 

ただし、ドローンはあくまでも技術補助の一部に過ぎず、従来の森林管理の手法が重要であることには変わりがありません。今後も現場において現物に触れ、実態を見極めながら目標とする森林の姿へ近づける森林管理を継続するとともに、ドローンという“新たな視点”も加えつつ、適切に社有林を守って行きたいと考えています。

 

*航空写真では、写真の中心から外周に行くに従ってひずみが生じ、そのままでは地図と重ね合わせたり、分析に用いることができない。このひずみを修正することを「オルソ化」といい、補正後の航空写真を「オルソ画像」と呼ぶ。

 

**数値表層モデル(DSM; Digital Surface Model)のこと。建物や樹木などの地上物を含めた高さを表現したデータ。

美唄山林
(写真左から 紅葉したカラマツ、常緑のトドマツ、落葉した広葉樹)
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美唄山林
(写真左から 紅葉したカラマツ、常緑のトドマツ、落葉した広葉樹)
間伐事業地のオルソ画像
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間伐事業地のオルソ画像
間伐事業地のDSM(デジタル・サーフェイス・モデル)
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間伐事業地のDSM(デジタル・サーフェイス・モデル)

2018年1月

外部の研究機関等と連携した生物多様性保全

三菱マテリアルの森は日本全国31箇所、合計約14,500haと広大な地域に存在するため、生物多様性保全を進めるにあたっては、外部の研究機関等のご協力も不可欠です。

 

たとえば、大型で希少な猛禽類であるクマタカ(環境省レッドリスト:絶滅危惧IB類)を林内で確認した際には、生息情報を社内に留めるのではなく、研究団体と共有して森を開放し、生息調査を行っていただいています。これにより、クマタカの生態解明に大きく貢献するとともに、生息状況を、より専門的な視点で把握することが可能となるため、今まで以上にクマタカに配慮しながら森林整備を行うことが可能になります。

 

また、林業試験場が実施するクマゲラの生息調査や、市町村が実施する絶滅危惧植物の調査、酪農学園大学等が実施するヒグマの生息実態調査など、外部の各種調査機関に森を解放することで、私たちだけでは手の届かない広大な範囲まで、多面的な視点から生物多様性の保全に繋がるさまざまな活動を展開しています。

 

私たちは、自社で行う地道な動植物のモニタリング活動等に加え、外部の研究機関等と連携し、より効果的な形で生物多様性保全や環境保全に努めてまいります。

「北海道クマタカ研究会」の方々が、
木を登ってクマタカの巣内を調査する様子
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「北海道クマタカ研究会」の方々が、
木を登ってクマタカの巣内を調査する様子
社有林上空を飛翔するクマタカの幼鳥
(上記北海道クマタカ研究会撮影)
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社有林上空を飛翔するクマタカの幼鳥
(上記北海道クマタカ研究会撮影)
社有林内の定点カメラによって撮影されたヒグマ(札幌市提供)
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社有林内の定点カメラによって撮影されたヒグマ(札幌市提供)

森林には、木材生産のほかにも二酸化炭素の吸収を始めとする地球環境の保全や、生物多様性の保全、土砂災害防止、水源かん養などの多面的機能があります。そうした多面的機能を発揮するには、森の状態を調べ、適切に管理しなければなりません。
このコーナーでは、豊かな森を次世代に残すために、わたしたちが日頃、どのような取り組みを行っているかをご紹介します。

  • 当社は、社有林管理の実務を子会社である「マテリアルリアルエステート㈱」に委託しておりましたが、2018年7月1日付で三菱マテリアル㈱総務部総務室が所管することと致しました。

2018年4月

社有林内・樹木のご紹介 ①「カラマツ」

今回から1年に亘り、「三菱マテリアルの森」で生育する代表的な樹種について、その特徴やエピソードをご紹介いたします。第1弾は「カラマツ」です。

 

カラマツは主に寒冷地に生育し、成長が早くて丈夫な材質であるため、北海道ではかつて炭鉱の坑道を支える坑木用途で積極的に植林されていました。また、日本の固有種の中では唯一葉を落とす松で別名「{落葉松}^{らくようまつ}」とも呼ばれており、降雪前にカラマツ林が一斉に黄葉すると、一面は美しい黄金色に染まります。

 

カラマツ材は強度に優れ、赤みのある独特の美しい風合いがあるなどの利点がある一方、乾燥後にねじれによる割れや狂いが出やすい難点があります。そのため、坑木以外の活用としては梱包用材やパレット材などの資材用途が中心でした。しかし、近年では板状の木材を貼り合せて加工することにより、合板材や集成材として建築材などで活用される事例が増えています。また、木材の乾燥技術自体も大幅に向上しており、カラマツ材を丸太そのまま、あるいは切り出して柱等に活用する{無垢材}^{むくざい}としての利用も可能になりつつあります。

 

なお、北海道における三菱マテリアルの森では、現在もカラマツ、グイマツ、グイマツ雑種F1などのカラマツ系の樹種を中心に植栽しています。一般的にカラマツを植えてから伐採するまでの期間は30~50年程度と言われていますが、カラマツ材が今後も建築材などの幅広い用途で需要があることを想定し、三菱マテリアルの森ではカラマツを伐採するまでの期間を延長し、より太く、高付加価値のある大径材を生産することを目指しています。

 

また、余談になりますが、カラマツ林を経営していると、木材生産以外に思いがけない副産物を得られます。毎年夏の終わりごろになると、地面からハナイグチ(別名ラクヨウ)というキノコがポコポコと頭を出します。ハナイグチは見た目の愛らしさに加え、キノコ狩りでは大人気の食用キノコであり、これからも貴重な森林資源として守っていきたいと思います。

黄金色に色づく晩秋のカラマツ林(早来山林)
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黄金色に色づく晩秋のカラマツ林(早来山林)
社有林カラマツ材で製作したパンフレット棚
(マテリアルリアルエステート㈱森林部応接スペース)
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社有林カラマツ材で製作したパンフレット棚
(マテリアルリアルエステート㈱森林部応接スペース)
カラマツ林に顔を出すハナイグチ
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カラマツ林に顔を出すハナイグチ

2018年7月

社有林内・樹木のご紹介 ②「ミズナラ」

寿命が500年を超すという「ミズナラ」
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寿命が500年を超すという「ミズナラ」

第1弾のカラマツに引き続きご紹介する樹種は「ミズナラ」です。

 

ミズナラは落葉性の広葉樹で、縁がのこぎり状にギザギザと波打つ大きな葉を持つのが特徴で、秋には皆さんおなじみのドングリの実がなります。ミズナラは日本全国の山地に広く分布しており、三菱マテリアルの森にも多く自生しています。ミズナラは寿命が500年を超す事もあるくらい長寿な木で、時には直径が1mを超します。

 

ミズナラ材は重くて固く、また、はっきりとした年輪が美しい木材で、高級家具材として欧米に輸出されていた事もあるほど優秀な木材です。また、家具に使用できないような細い木でもシイタケ栽培用のほだ木としても適しているほか、多少の曲りなどがある木でも、薪ストーブ用の薪や、木炭などとしての利用価値も高く、いずれの用途でも重宝されるオールラウンドプレーヤーです。

ミズナラをはじめとした広葉樹は、主に天然の森で産出されものであり、自然のサイクルに大きく背くような手法では持続可能な資源維持はかないません。開拓以前の北海道では、このミズナラをはじめとした巨木が数多くあったと言われており、そこに暮らすアイヌの人々はそれをむやみに伐採することなく、必要最小限の利用に留め、決してその調和を乱すような事はしませんでした。アイヌの人々にとって持続可能な資源利用の考え方というのは、その自然の中に生きる者として当然のことのように根付いていたのです。

 

私たちが管理する三菱マテリアルの森においても、ミズナラをはじめとした広葉樹林の資源を、旧来の豊かな姿に近づけていくことを念頭に置きつつ、その素晴らしい木材を持続可能な範囲で社会に還元していく事は、とても大きな課題の一つだと考えています。

大木も小さな実生(苗木)から
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大木も小さな実生(苗木)から
細い枝木は、シイタケ栽培の「ほだ木」として活用
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細い枝木は、シイタケ栽培の「ほだ木」として活用

2018年10月

社有林内・樹木のご紹介 ③「スギ」

社有林産のスギを製材する様子
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社有林産のスギを製材する様子

社有林の樹種を紹介する第3弾は、皆様おなじみの「スギ」です。

 

スギは日本固有の常緑針葉樹で、屋久島の縄文杉に代表されるように、時に直径10m、樹高50mに達し、寿命が長いものは2,000年を超えるものもある樹種です。本来の自然分布は本州北端から屋久島までとされていますが、植林が容易で建材としての高い需要が見込まれたことから、戦後は日本全国に植林され、現在では北海道の道南地方までスギの植林地が見られます。

スギ材は幹が真っ直ぐに通っていて加工がしやすいため、主に住宅の「柱」材として古くから用いられてきました。近年では複数の板を張り合わせて作る集成材としても用いられ、大型の建築物にも活用されるようになっています。当社が管理するスギ林から伐り出したスギ材も「新国立競技場」のスタジアム外周部の軒庇(のきひさし)として活用される予定です。

 

50~60年生前後のスギ林は日本全国に実に多く存在します。この隠れた財産を如何にして有効活用していくか、また、この増えてしまった部分のスギ林を将来的にどうしていくかといった選択は、今後の日本の森林を形成する上で、非常に大きな分岐点になるといえます。当社ではその一つの答えとして、スギ林の間伐を繰り返してその健全性を保ちつつ、間伐で生じた空間に生えてくる天然の広葉樹等を育成し、多様な樹種による混交林化を促すことで、災害に強く、将来的に価値の高い森に育てていくことを目指しています。

スギ林の調査(生野山林)
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スギ林の調査(生野山林)
冬のスギ林(森山林)
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冬のスギ林(森山林)

2019年1月

社有林内・樹木のご紹介 ④「アカエゾマツ」

社有林の樹種を紹介する第4弾(最終回)は「アカエゾマツ」です。

 

アカエゾマツはマツ科トウヒ属の常緑針葉樹で、漢字では「赤蝦夷松」と書きますが、近縁種のエゾマツとともに「北海道の木」として指定されています。アカエゾマツはその名の通り樹皮がやや赤みを帯びていることなどからエゾマツと見分けることができます。

 

アカエゾマツの木材は年輪幅が狭く均質で、針葉樹の中では強度が高いと言われており、とりわけ天然のアカエゾマツはピアノの響板(グランドピアノでは弦の下に張ってある板)や、バイオリンの表面板といった楽器材の用途として活用されています。また、アカエゾマツは成長がゆっくりで樹形が整っているものが多いという特徴から、庭木や盆栽等としても活用されています。

 

三菱マテリアルの森にもアカエゾマツの森があり、その個性が生きる活用をしています。2018年9月に発生した北海道胆振東部地震では、三菱マテリアルの森が所在する厚真町も甚大な被害を受けました。震災から初めての冬を迎えようとした頃、少しでも三菱マテリアルの森が地元の元気に繋がるような形で、お役に立てればと思い、同町所在の保育園2園に、このアカエゾマツを「クリスマスツリー」として寄贈しました。クリスマスツリーと言えばモミの木(マツ科モミ属)が一般的ですが、郷土の木であるアカエゾマツも適しており、園児たちの手によって装飾され、立派なクリスマスツリーとなりました。

 

クリスマスツリーとしての役目を終えたアカエゾマツは、春が来たら三菱マテリアルの森へ戻します。一部の木は、保育園や地元企業にて次のクリスマスまで大事に保管していただくことにもなりました。

 

これまで4回にわたり社有林の樹種を紹介してきました。ひと括りに「森」といっても、様々な個性のある樹木から成り立っている事をお伝えできたのではないかと思います。私たちは、こうした木々の多様性を大事にしながら、持続可能な範囲でそれらを有効活用し、三菱マテリアルの森が少しでも皆様の生活を豊かなものにできるよう努めてまいります。

アカエゾマツの苗木
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アカエゾマツの苗木
寄贈した保育園でクリスマスツリーとして装飾されたアカエゾマツ
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寄贈した保育園でクリスマスツリーとして装飾されたアカエゾマツ

2019年4月

多様な広葉樹材を活用した新本社オフィス家具を製作!!

三菱マテリアルの森は多様な樹種で構成されていることを前回までの樹種紹介コーナーでお伝えしましたが、適切な森林整備をする中でそこから生まれる多様な特性を持った木材の有効活用についても日々考えています。

 

送電線への接近危険木として広葉樹を伐採することとなり、その最大限の有効活用を検討した結果、丸の内新本社オフィスの「繋がるオフィス」を象徴するようなフロアを繋ぐ中階段やテーブル家具として、また、三菱マテリアルの森を管理する森林グループが所属する札幌オフィスの執務デスクやテーブルとして活用することとしました。

 

家具にはミズナラ、ヤチダモなど計7樹種を使用し、樹種によって違う木目や色合いが醸し出す、やさしく落ち着いた空間となりました。それは多様性に満ちた森林がオフィスの中でも生き続けているような感覚の醸成や、社員のモチベーションや環境意識の向上にも繋がると期待しています。また、価値ある家具を将来にわたって大事に長く使うことで、CO2の長期固定にも貢献しています。

 

私たちは、当社社有林について社内外への情報発信を更に強化し、これからも木材の有効活用を考えながら、健全で美しい森づくりを目指していきます。

本社食堂ビッグテーブル(イタヤカエデ材)
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本社食堂ビッグテーブル(イタヤカエデ材)
本社多目的テーブル(ヤチダモ材)
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本社多目的テーブル(ヤチダモ材)
本社・中階段(ミズナラ材)
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本社・中階段(ミズナラ材)
札幌オフィス執務デスク(ミズナラ他計6樹種)
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札幌オフィス執務デスク(ミズナラ他計6樹種)

2019年7月

社有林産木材を活用した木製小物

社有林産木材の有効活用事例として、前回のオフィス家具製作に引き続き、木製小物の製作についてご紹介いたします。

 

伐採した木は建築材や家具材等として用いる一方で、曲がったもの、長さや太さが足りないもの、あるいは製材時の端材などについても、可能な限り付加価値を高めて利用したいと考えており、木製小物の製作はその取り組みの一つです。

 

「三菱マテリアルの森」オリジナルの木製小物として、カラマツ間伐材を活用したポストカードフレームやスマートフォンスタンドを製作しています。また、広葉樹の端材を使用した卓上カレンダーも製作しています。これらは、植樹祭や育樹祭のイベントの記念品や、お客様への贈呈品等として活躍しています。

 

長い年月をかけて育った木から得られる貴重な木材。少しも無駄にせず、一番の有効活用は何かについて、これからも考えて参ります。

カラマツ間伐材を活用したポストカードフレーム(左)とスマホスタンド(右)

オフィス家具製作時の広葉樹端材を活用した卓上カレンダー
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オフィス家具製作時の広葉樹端材を活用した卓上カレンダー

2019年10月

スイス人を招きワークショップを開催

三菱マテリアルの森では、天然力(自然が本来持つ力)を活用した持続可能な森づくりを目指しております。スイスでは、1990年頃から多様な森づくりへの意識が高まり、天然力を最大限活用し、環境と経済の両立を目指す「近自然森づくり」が実践され、一定の成功を収めています。そのスイスから講師3名を北海道安平町に位置する早来山林に招聘し、7月31日~8月1日の2日間、当社職員等26名を対象としたワークショップを開講しました。

 

講師を務めていただいたのは、スイスで最も著名なフォレスター(森林管理者)のロルフ氏、森林作業員のフィリップ氏とシリル氏です(スイスではフォレスター、森林作業員ともに国家資格で憧れの職業だそうです)。

 

フォレスターのロルフ氏は地質や地形、植生等の状況から、生育地の特性を見極め、目の前の木や森が今後どのように推移するかを推測します。仮に、その木や森の姿が将来的な理想と合致するのなら「何もしない」。違うのであれば、その乖離を是正するための「最低限」の手入れを行う。つまり、可能な限り自然自身に森の仕事をしてもらう。これが「近自然森づくり」の根本です。また、森林作業員のフィリップ氏とシリル氏の抜群のコンビネーションによる伐採作業もとても鮮やかで、その技術の高さに一同感嘆しました。

 

ロルフ氏によればフォレスターが最も重要視すべきは「観察力」。私たちもまずは観察眼を徹底的に磨くことを肝に銘じ、将来にわたる確かな森づくりに取り組みます。

ロルフ氏による説明
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ロルフ氏による説明
ワークショップの様子
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ワークショップの様子
前列右からロルフ氏、フィリップ氏、シリル氏
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前列右からロルフ氏、フィリップ氏、シリル氏

2020年1月

社有林に生息する希少種「クマゲラ」

三菱マテリアルの森には多くの希少種が生息しています。今回はその中から、国の天然記念物であり、環境省のレッドリストで絶滅危惧Ⅱ類にも指定されているクマゲラについてご紹介いたします。

 

キツツキ類のクマゲラは、日本全国に広がる三菱マテリアルの森のうち、特に北海道の山林において、比較的広範囲で確認されています。特徴は何といっても、カラスほどの大きな黒い体にトレードマークの赤い帽子。

 

キツツキ類は、木をつついて音で縄張りを主張する「ドラミング」を行なうことが知られています。キツツキと聞いて一般的に想像するのは、「コココココンッ」という軽やかな音ですが、クマゲラの場合は「ゴゴゴゴゴッ!!」という豪快な音を発します。その一方で、飛び立つときは「コロコロコロコロ...」と独特の愛らしい鳴き方をするため、広い森の中でも比較的容易にその存在を感じることができます。

 

クマゲラは好奇心が強いのか警戒心が薄いのか、私たちが林内に立ち入って森林の調査を行っていると、すぐ近くまで遊びに来てくれることもあります。そんなクマゲラですが、春になると木の穴に巣作りして子育てを行うので、この時期に林内で作業を行う場合は、クマゲラの子育てを邪魔しないよう細心の注意を払っています。

 

クマゲラをはじめとする希少種の保全に努めるのはもちろんのことですが、その他多くの動植物についても、その特性等について理解を深め、必要に応じて生息場所や巣の位置をマッピングしてチーム内での共有を図るなど、適切な生物多様性の保全に努めることも私たちの大事な役目です。

三菱マテリアルの森に生息するクマゲラ

2020年4月

三菱マテリアルの森に今年も春の訪れ

長く寒い冬の間も、木の太さや高さなどを計測し、森の成長を観察している「森の守り人」である私たちにとって、春はもっとも待ち遠しい季節です。

 

澄んだ空気のなか、ザクザクと残雪を踏みしめながら林内を歩くと、水分を含んでキラキラと光る地面に、フキノトウ、エゾエンゴサク、カタクリ、ヒメイチゲ、ニリンソウなど、早春の草花を見つけることができます。冬には静まりかえっていた林の中も、春の陽気に誘われた小鳥の声で包まれ、土の匂いが香り、木々の新芽も少しずつ淡い緑色を広げていくのがわかります。

 

新型コロナウィルス感染症の拡大により、私たち森の守り人も大幅な活動の制限を余儀なくされていますが、今年も変わらず三菱マテリアルの森に春がやってきました。活動自粛により行動を制約される方も多いと思いますが、改めて癒しや安らぎを提供する自然の魅力、美しさと、それが変わらずに営まれることの大切さを実感していただければありがたいです。

フキノトウ
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フキノトウ
エゾエンゴサク
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エゾエンゴサク
カタクリ
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カタクリ
ヒメイチゲ
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ヒメイチゲ
キビタキ
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キビタキ
新緑の葉を広げるミズキ
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新緑の葉を広げるミズキ
ニリンソウが咲く清流
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ニリンソウが咲く清流

2020年7月

「天然力を活かした森づくり」を実現するためのモニタリング調査

三菱マテリアルの森では、天然力を活かした森づくりを目指しており、植栽した木のみならず、自然に生えてくるさまざまな木々も含めた多様な森を扱っています。そのため、私たち森の守り人は森をよく観察し、その仕組みを理解し、上手く活かすため、森林内に多くの定点調査地を設け、定期的なモニタリング調査を行うことで森の状態とその変遷の把握に努めています。


定点調査地でのモニタリング調査では、木の種類、太さ、高さ、質、安定性、林床の植生、天然の種子から発芽した幼木などを調査し、

 

  • 間伐により、明るく健全な森林になったか?
  • 林内の草花などの生物の数は増えたか?
  • 残した木は太く元気に育ったか?
  • 天然に生えた木も順調に生育しているか?

 

など、多くのことを確認していきます。森は一見変化していないような錯覚を感じてしまいますが、こうして詳細に森林を調べてみると、確かに木は太く高く成長し、森林環境も絶えず変化していることを実感することができ、将来に繋がる大事な仕事をしているのだという実感が湧いてきます。

 

私たちが取り組む森づくりは、一朝一夕で成るものではなく、100年、あるいはもっと長い期間を要します。また、天然の力を利用するがゆえに、必ずしも思い通りにいかないこともあります。だからこそ、こうしたモニタリング調査を今後も確実に継続し、そのデータをもとに臨機応変に森づくりを改善していくことで、私たちの理想とする社有林の姿へと近づけてまいります。

天然木の混じりあう森 - 100年先の森の姿を考える
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天然木の混じりあう森 - 100年先の森の姿を考える
間伐後の草本の回復状況を調査
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間伐後の草本の回復状況を調査
天然に発芽した木(ホオノキ)
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天然に発芽した木(ホオノキ)

2020年10月

オンライン木育授業に初挑戦!

三菱マテリアルの森では、植樹祭などの環境イベントを毎年開催しておりますが、今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、現地イベントは全て中止となってしまいました。この状況下でも、森の守り人である私たちにできる社会貢献はないかと考えておりましたところ、縁あって北海道池田町林業グループが主催するオンライン木育プロジェクトに講師として参加させていただきました。

 

同プロジェクトは、全国から参加いただいた6名の子どもたちを対象に開催され、全4回ある授業のうち、初回の8月4日に当社が担当しました。私たちは授業を通して
「森は楽しく、人の生活を豊かにしてくれる」
ことを伝えたいと、森が多くの生物によって成り立っていることや、私たちに何をもたらしてくれるのかについて、子どもたちと話し合いました。
今回、初めての森遊びを楽しんだという後日談や、地球温暖化などの環境問題に興味を持ったという感想、プログラム最終回で子ども達が発表してくれた「森や木を使ってしたいこと」も実に楽しそうな内容ばかりで、私たちのメッセージも伝わったと嬉しく思いました。

 

授業中に「木も痛みを感じるのですか?」と質問がありました。子どもならではの素朴な質問ですが、私たち森の守り人にとって重要な問いであると思いました。
ドイツの森林管理官ペーター・ウォールレーベン氏の著書によると、木々は互いにコミュニケーションを取り、助け合う性質があるなど、想像以上に「人間らしい」側面があるそうで、木に「痛い」という感情があっても不思議ではありません。間伐で木を伐るという行為も、その痛みを知った上で慎重に行わなければならないのだと改めて実感する機会となりました。
今回のオンライン木育プロジェクトは、教えるだけではなく、子どもたちから教えられる機会となり、私たち森の守り人にとって大変貴重なものでした。今後も是非こうしたオンラインツールを通じても、子どもたちと森について話し合う機会を作っていきたいと思います。

オンライン木育授業の様子
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オンライン木育授業の様子
授業で使用したスライド
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授業で使用したスライド

2021年1月

育てる木、伐採する木を決める「選木」について

私たちは、木を健やかに育成し、森の安定性・健全性や木材としての利用価値を高めること、森の中に太陽の光を十分に取り込み、多くの動植物が育つことができる森にすることなどを意識して間伐などの森林整備をしています。

 

間伐では、育てる木・伐採する木を決める「選木」が、その森の将来の姿を決定づけるため、私たち森の守り人にとって最も大事な仕事となります。
選木では、まず、どの木を育てるのか?という問いからはじめます。根や幹はがっちりと安定しているか?将来の木材としての質を見込めるか?育てる木の種類に偏りはないか?森全体としての多様性が維持できるか?といったことを吟味し、特に育てるべき木を選びます。
次に、その育てる木を大きくするために、太陽光を奪い合っているライバルとなる木を伐採する木として選びます。育てる木の安定性を高めるためや、森全体の環境を急に変え過ぎないために伐採してはいけない木もあり、一筋縄にはいきません。

 

選木は、私たち森の守り人の中でも意見が割れ、現場でのディスカッションもしばしばです。選木結果に明確な正解はなく、その場で答えはわからないものですが、正しい方向に進んでいるかどうかは、森が長い年月をかけて教えてくれます。

育てる木を吟味する
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育てる木を吟味する
 育てる木には青テープを巻く
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育てる木には青テープを巻く

2021年4月

「木の卒園証書」の素材として社有林産木材を提供

春は草木が芽吹く季節であり、旅立ちの季節でもあります。

 

私たちは札幌市にある山林の一部を、保育園の自然体験の場として提供しています。その森でたくさん遊んだ園児たちからも、卒園を迎えた子たちがいます。
保育園では木の板で作った卒園証書を渡すことになり、その素材として私達の社有林の木材を使っていただくことになりました。

 

オフィス家具製作の際に余った木材(ヤチダモ、ハンノキ)を活用し、地元の工房でカッティング、サンディング(ヤスリがけ)を行い、木目が綺麗に見える板の状態にして保育園に届けました。その後、保育園でレーザー刻印などが行われ、6名の園児に渡されました。

 

この卒園証書を受け取った園児が何年かたった後に証書を見て、三菱マテリアルの森で遊んだことを思い出してもらえるような卒園証書となれば嬉しいです。

 

私たちは社有林材の有効活用を通じた地域貢献について、これからも考えていきたいと思います。

証書授与の様子
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証書授与の様子
 木の卒園証書
(縦200mm×横230mm×厚50mm)
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木の卒園証書
(縦200mm×横230mm×厚50mm)

2021年7月

「マテリアルの森」公式Instagramアカウントを開設!

マテリアルの森での環境保全活動の推進に加え、森林の美しさや楽しさを発信することも、私たち森の守り人にとって非常に大事な仕事のひとつです。

 

環境イベントや自然体験フィールドの開放、木材やクリスマスツリーの提供などを通じて地域の方々にマテリアルの森の魅力を発信する一方で、私たちが日ごろ森林を管理するなかで出会う風景や可愛らしい動植物などについても、より多くの方々と共有したいと思い、このたび、マテリアルの森の魅力や私たちの森づくりの様子など発信する公式Instagram(SNS)を始めました。

 

公式Instagramでは、森の守り人ならではの臨場感あふれる視点で森の様子をタイムリーにお届けしていきます。皆様の日常のちょっとした時間に森林浴をしているような感覚で、森のリラックス効果や楽しみ、新たな発見などをお届けできれば幸いです。
私たちは今後もマテリアルの森と皆様とのつながりを深め、より一層森林の価値を提供していけるよう努めていきます。

「マテリアルの森」公式Instagramアカウント
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「マテリアルの森」公式Instagramアカウント

2021年10月

全国育樹祭式典行事に出展

2021年10月10日、北海道で開催された第44回全国育樹祭式典行事「おもてなし広場」にマテリアルの森の取り組みを紹介するブースを出展しました。全国育樹祭は、皇族殿下による木のお手入れや、参加者による育樹活動を通じて、森林に対する愛情を培うことを目的に毎年開催されています。今年度の式典は新型コロナウイルス感染拡大防止のため、規模を縮小して約700名の参加者で開催され(当初予定では5,000名)、秋篠宮ご夫妻はオンラインでご覧になりました。

 

マテリアルの森のブースでは、北海道森町と協定している森町有林風倒被害地復旧活動や、マテリアルの森全般における森づくり、生物多様性の保全、木材の有効活用事例、社有林資源を活用した地域貢献の取り組み等のポスター展示と、マテリアルの森のイメージムービーで、当社の環境活動を紹介しました。
また、北海道が認定する、木育を普及させる専門家である木育マイスターの方と共同で、マテリアルの森の間伐材を使った木製コースターづくり体験も実施し、多くの方に楽しんでいただきながら、木の種類で異なる質感や重さ等も感じてもらいました。

 

今後もこのようなイベントに積極的に参加し、マテリアルの森をより多くの方に知ってもらい、楽しんでいただく機会を作っていきたいと思います。

展示の様子
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展示の様子
木製コースターづくり
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木製コースターづくり
参加者で賑わうブース
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参加者で賑わうブース

2022年1月

クリスマスツリーの寄贈と植樹

2021年12月、マテリアルの森の早来山林で育ったアカエゾマツの木を、クリスマスツリーとして北海道厚真町の保育園に寄贈しました。2018年の北海道胆振東部地震の復興支援をきっかけに始めたこの取り組みは今回で4年目となります。
今回より新たにマテリアルの森の手稲山林近郊の札幌市内の保育園にもクリスマスツリーを寄贈しました。

 

2021年10、11月には、それぞれの園児の皆さんを早来山林、手稲山林に招待してアカエゾマツの苗木の植樹を行い、「クリスマスツリーの森」としての育成を始めました。木が大きく育ちましたら、クリスマスツリーとして未来の子どもたちに贈る予定です。
今後もクリスマスツリーの寄贈と植樹の取り組みを継続し、少しでもマテリアルの森が地域の皆さまの笑顔につながるよう努めていきます。

園児によって立派に飾り付けられたクリスマスツリー
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園児によって立派に飾り付けられたクリスマスツリー
早来山林でのクリスマスツリーの森植樹
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早来山林でのクリスマスツリーの森植樹
手稲山林でのクリスマスツリーの森植樹
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手稲山林でのクリスマスツリーの森植樹