三菱マテリアルの社有林では、製品として木材を伐採し出荷していますが、同時に、そこにはキタキツネ、エゾモモンガなどの哺乳類、オオタカやクマゲラなどの鳥類など、とても多くの生物が生息しています。そのため私たちは、日々のモニタリング活動などを通じて、彼らの貴重な生活の場を奪うことのないよう常に気を配っています。
ところで、「木を伐るという行為自体が、生物にとって悪影響を及ぼすのではないか?」といった疑問を持たれる方もいらっしゃると思います。たしかに、東南アジアなどで見られるような、無計画に森林を一気に伐採する方法は、生物への悪影響が大きいと思われます。しかし、たとえば過去に人の手によって植えられた樹木は、何も手を入れずに放っておくと、木と木の間隔が狭くなり、地面に十分な光が届かなくなってしまいます。そこで、適度に伐採してある程度光の入る空間をつくり、地面を明るく保ってあげると、そこに集まる生物が増え、生命を育む環境が生まれます。
それでは、育てた木をすべて伐採することは、自然破壊になるのでしょうか。実はこれも、必ずしも生物にとってマイナスの影響ばかりであるとは言えないのです。たしかに、森林がなくなれば、そこに暮らしてきた生物の数が一時的に減少するかもしれません。しかし、それまで変化のない森林であった中に、新しい空間が生まれることは、生物にとって新たなチャンスにもつながります。たとえば、森林の中に草原が生まれれば、バッタなど昆虫にとって生活範囲が広がり、生息数も増えます。また、オオタカやノスリなどの猛禽類にとっても地上が見渡しやすくなり、野ネズミなどの獲物を捕まえやすくなります。
自然界においては、台風や山火事、その他のさまざまな自然現象によって、森林が草原に変わり、長い年月を経て再び森林に変わる、というように、森は絶えず変化を繰り返しています。そしてそこに生きる生物も、彼らにとってふさわしい環境を見つけ出しながら日々暮らしています。木の伐採は、一見すると生物にとって悪影響を与えるように思われがちですが、こうした自然界の環境変化に近い形で、一定の気配りのもとで行うのであれば、生物の暮らしを守ることができるのです。
私たちは、今後も社有林を経営していく中で、そうした自然界の仕組みを十分に理解しながら、生物の多様性に配慮した社有林づくりを心がけていきたいと思います。